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道徳教育の批判と創造 社会転換期を拓く

16面記事

書評

藤田 昌士・奥平 康照 監修
教育科学研究会「道徳と教育」部会 編
主体性育む重要性を多面的に考察

 学校教育において、道徳教育はどのように位置付けられるべきなのか。文部科学省が2018(平成30)年から新たに始めた「特別の教科道徳」は、この問いに対する一つの「答え」である。果たして、この「道徳の教科化」は、学校教育に何をもたらすのか。注視と継続的な検討が必要とされている。
 本書は、教育科学研究会「道徳と教育」部会が、半世紀以上にわたって行ってきた研究活動の成果と到達点をまとめたものである。
 全12章から成り、以下のような多岐にわたる内容が含まれている。教育実践に基づく道徳についての理論的・原理的な考察。道徳の教科書や道徳教育の方法・評価についての具体的な分析。ジェンダーやセクシュアリティ、子どもの食育やケアの観点から見た道徳教育の検討。いじめを発端とした学級指導・歴史教育・平和学習の教育実践における子どもの学びと成長の実践記録。
 これらの論考を通じて、子どもが自分自身で主体的に価値を選択し、それを実現していく能力を育てる道徳教育の重要性が明らかにされていく。他者に対して誠実に応答し、自己と他者の存在と権利を承認・尊重することは人間関係の根本であり、道徳の基盤となる。本書は、自分の頭で考え、判断する子どもを育てていく道徳教育の本質的な道筋を多面的な形で示している。
(2700円 エイデル研究所)
(都筑 学・中央大学教授)

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