SOGIと人権を考えるLGBT法連合会　編
差別禁止・人権保障の法整備へ向けて

　当事者との対談式講話を続け４年目を迎える。同じ苦しみや喜びを体感させるために意図的・意識的に仕掛けて傍観させない工夫をしている。コラボする当事者に一番うれしかったことを聞いてみた。「パートナーと一緒に住める条例ができたんです」と涙ぐんだ。そこまで法で禁止されていることを私たちは認識しているだろうか。この分野を恥とする、または無関心の為政者が多いためか、日本の法制度の遅れは海外と比較にならない。
　誰が人権保障を実現しなければならないのかと問えば、それは一番に国家に課せられた義務である。先進国でありながら日本には「差別を包括的に禁止する法律が存在しない」「人権をきちんとシステムとして保障する制度も存在しない」。こうした背景の中での法整備は容易ではないが、何としても実効性のあるものにしなければならない時が来ている。
　社会に埋め込まれた性的指向・性自認・性別表現・性的特徴（SOGIESC）への偏見や固定概念がいまだに強い。それは教育の在り方によってなされたとも言える。未来を生きる子どもたちに関わる者として、「誰」の問題なのかではなく、「何」を基準に暴力や差別を受けているのかに注目させねばならない。働くトランスジェンダー当事者・池田氏と国際基督教大学学長・日比谷潤子氏の項から読まれると、より納得できる。さすがにLGBT法連合会編と感服した。
（１７２８円　かもがわ出版）
（大久保　俊輝・亜細亜大学特任教授）