関係省庁による動き激化 まずは一歩を踏み出そう
12面記事コラム・変革の時を迎えて
このところ学校とICTをめぐる動きがものすごく速い。
昨年11月に柴山文部科学大臣が提出した「新時代の学びを支える先端技術のフル活用にむけて ~柴山・学びの革新プラン~」の後、半年を経て、その目標値が定まった印象だ。
6月26日、文科省は「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」の最終まとめを出した。Society5・0時代の到来や子どもたちの多様化といった変化に際して、学校・教師の役割をあらためて整理し、「多様な子どもたちを誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学び」を実現するためにICTを基盤とした先端技術や教育ビッグデータを効果的に活用することにこそ活路があるとした。
また6月28日には学校の情報化を後押しする「学校教育情報化推進法」が成立。学校の各教科等の指導等におけるICTの活用、情報教育の充実、校務でのICTの活用を推進するために、国や地方公共団体の責務を規定しつつ、学校教育情報化推進計画の策定を文部科学大臣に義務づけるなどした。
時を同じくして、経済産業省「未来の教室」とEdTech研究会は「未来の教室ビジョン」を発表。未来の教室の構築に向けて、(1)知ると創るが循環する学びのSTEAM化(2)一人ひとり違う認知特性や学習到達度を基にした学びの自立化・個別最適化(3)学習者中心の学習基盤の強化を提言としてまとめた。
今月に入ると、総務省で、昨年11月から教育現場での先端技術や教育ビッグデータを活用する意義と課題について議論を重ねてきた「教育現場におけるクラウド活用の推進に関する有識者会合」の最終報告がとりまとめられた。
このように今後の学校とICTの方向性を指し示す報告や法案が一定の期間に出され、関係省庁が足並みをそろえて何かアクションを起こした時は、振り返ってもなかったように思う。では、なぜ、今なのか―。
当然、学習指導要領の改訂と無縁ではない。新しい学習指導要領では学校でのICT環境整備に踏み込んだ記述がなされ、情報活用能力は学習の基盤だと記されている。だからこそ、それゆえの、こうした動きなのだと理解したい。
大切なのは、これだけの関係省庁が歩みをそろえてさまざまな報告をとりまとめた背景や目的をあらためて理解するということだ。キャッチーな言葉に踊らされないためにも、本質を見極めるためにも、何かの手掛かりを探すうえでも、「なぜ、今なのか」ということに想いを馳せることが必要不可欠だ。
とはいえ、現段階での学校のICT環境は脆弱だ。やりたいこと、叶えたいことも機器が充分に整備されていないから実現できないという声はよく耳にする。それでもなお、7年後には世界最先端の教育環境を実現するというのが、文科省が掲げた最終ゴールだ。そこを明確に意識しつつ、今できることからやってみる。変化の振り幅が大きな時代だからこそ、必要なことを理解し、咀嚼し、それぞれの立場で実現に向けて動いていく。求められるのは少しずつのトライなのではないだろうか。
いよいよ始まった令和最初の夏、それぞれの報告書や法案が示していることを意識したい。