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教員研修でプログラミング教育導入を支援

ICT教育特集

講義と演習で研修を組み立てる佐藤氏

全校の担当者を対象に今年から
静岡県

 来年度から小学校で始まるプログラミング教育の実施を支援するため、静岡県教育委員会では、担当教員向けの悉皆研修を今年度から実施している。参加者はプログラミング教育導入の背景や学習指導要領における位置づけを学んだほか、プログラミング教材を体験して具体的な指導方法を検討した。

算数・理科の該当単元を導入の糸口に

コンピュータ活用した学習で論理的思考の育成を
 静岡県教育委員会では、「小中学校における情報活用能力の育成~プログラミング教育~」と題した研修を、今年度から2年計画で実施する。
 プログラミング教育が必要とされる社会的背景と、小学校で実践する際の基本的な考え方や具体的な指導方法の理解を目指すもので、各校のプログラミング教育担当者(小学校は悉皆、中学校は希望者)を対象に、今年度は6月と7月に県内2会場で行った。
 6月20日に裾野市で行われた研修では、はじめに県教委教育政策課の担当者が、新学習指導要領の実施を前にした学校のICT整備状況や、準備の現状などを報告した。
 新学習指導要領の全面実施に向けた準備は各校で進んでいるが、プログラミング教育に対しては、「取り組みの仕方がわからない」「情報不足」といった課題を挙げる学校も多い。
 県教委では今後、必要な学習環境の整備、実践例や教材に関する情報発信を進めながら、本研修などを通じて教員の指導力向上も図っていく方針。今回の研修の一部もeラーニングサイトに動画掲載し、研修受講者が自校で伝達講習を行うことで、来年度からの円滑な導入と実施を支援する計画だという。
 続いて、常葉大学教育学部の佐藤和紀講師が「小学校段階におけるプログラミング教育」と題して講義を行った。
 学習指導要領におけるプログラミング教育は、プログラミングを使った問題解決を体験しながら、論理的思考を培うものとされている。
 佐藤氏は、「プログラミング的思考は、子どもがコンピュータの活用を体験しながら身につける思考。論理的思考は、国語や算数等の多くの学習活動を通して身につける思考」と区分されると指摘。従って、プログラミング教育を通じた論理的思考力の育成には、「コンピュータの活用は不可欠で、使わない学習を行う場合も、使う活動につながるようなカリキュラム設計が求められ、つながっていることが表現されていないと、コンピュータを使わなくていいというような誤解が生まれやすい」と強調した。

学校で実践しやすいプログラミング体験
 文科省が取りまとめた「小学校プログラミング教育の手引」では、プログラミングに関する学習活動の枠組みとして、「プログラミング教育との関連が教科書に示されている単元で、教科等の目標を達成するために実施する(A分類)」、「教科書に示されていない単元等で、教科等の目標を達成するために実施する(B分類)」、「教科書に示されていない単元等で、プログラミングを体験する(C分類)」などを例示している。
 A分類では、5年生算数の正多角形の学習と、6年生理科の電気の働きの単元が学習指導要領で示されており、算数はプログラミングソフトを使った作図、理科はセンサーと照明を組み合わせた実験などが教科書でも扱われている。
 佐藤氏は、「小学校で取り組みやすいのは、授業目的をプログラミングの体験に絞り込めるC分類と、単元との関連付けが整理されているA分類」とし、まずはこの両面からの導入が期待されると述べた。
 後半は演習として、プログラミング教材である「GLICODE(グリコード)」や「Pyonkee」を使って授業のイメージを深めた。
 このうち「グリコード」は、所定のルールに沿って並べたポッキーをタブレット等のカメラで読み取り、キャラクターを動かすゲーム感覚の内容で、楽しみながらプログラミングの基本概念を理解し、論理的思考力を高めることができる。参加者はグループに分かれて教材を体験し、授業での活用方法などを話し合った。
 佐藤氏は、各教科書会社もプログラミングに関連した単元のデジタル教材を提供していることを紹介し、「こうした外部教材も有効に活用しながら、これからの社会を生きる子どもたちとって大切な情報活用能力を育ててほしい」と参加者に呼びかけた。

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「グリコード」を使った体験には楽しそうに取り組んでいた

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