小中学校すべての体育館に大型冷風扇を導入
12面記事小・中学校の体育館に導入された「大型冷風扇」
導入事例
避難所となる体育館の暑さ対策として
学校の防災機能の強化が叫ばれる中、坂戸市では昨年6月、すべての小・中学校の体育館18箇所に大型冷風扇を導入した。きっかけは熊本地震の教訓から、避難所の暑さ対策の必要性を痛感したことにある。「当市でも全小・中学校が災害時の避難所に指定されていることから、万が一の際に避難される方々の体調管理や、児童生徒の熱中症対策に役立てることを目的に導入しました」と話すのは、市教育委員会教育総務課の三田課長だ。
こうしたなか、大型冷風扇を選択した理由については「体育館のような広いスペースにエアコンを整備するには膨大な予算がかかること。加えて災害発生時には電気などのインフラが停止する可能性がある中で、各避難所に配備してある発電機に対応し、単相100V電源で使用できることが決め手になりました」と説明する。
学校施設の9割が地域の防災拠点に指定される中で、避難者を受け入れる体育館の大半には空調設備が整備されていない。同市もすでに小・中学校の教室にはエアコンが設置されているが、他の自治体と同様に体育館まで財源が賄えないのが実情だ。だからこそ、災害に備えて「今できること」に着手する必要があったといえる。
三田課長
気化熱式で体にやさしく、省エネも実現
機種の選定にあたっては、体育館で使用できるパワーや風量の調整ができるといったスペック、教員が扱うため使いやすく、メンテナンスが容易であるなどの条件を設定。「その仕様に沿うとともに、想定よりもコストを低く抑えることかできました」と、(株)ナカトミの大型冷風扇が選ばれた理由を語る。
本製品は水の気化熱を利用して冷却するため、長時間風に当たっても体にやさしく、電気代も抑えられるなど省エネ効果が高いのが特長。しかも、排熱が発生しないためスポットクーラーよりも空間が涼しくなるほか、左右60度オートスイングや給水口から注ぐだけの簡単給水など使い勝手にも優れており、体育館はもちろん工場や倉庫などで普及が進んでいる。
熱中症予防など、学校での活用状況に手応え
導入から1年が経過し、気になるのは学校の活用状況だ。「夏場の暑い時期の部活動では大型冷風扇の前に集まってミーティングしたり、体調がすぐれない子どもが出たときは風に当たって休んだり。あるいは、大型扇風機がある学校では併用して使ったりと臨機応変に活用しているようです。また、キャスター付きで移動も可能なため、武道場に持ち込んで使っている中学校もあると聞いています」と手応えを感じている。
さらに、こうした評価もあってか、今年度は市民が利用するすべての公民館にも大型冷風扇を導入することになったと三田課長。「年々夏季の気温も上昇していることから、災害時に限らず、学校にはふだんの熱中症対策として今後も上手く活用してほしいですね」と期待を寄せた。