無線LAN整備をいち早く進める工夫~総務省予算やBYODを取り入れて~
12面記事災害時の通信手段に無線LANを整備する自治体が増えている
東京都がスマホ授業を公認
現在、文部科学省では、これからの時代を生き抜く資質・能力を育成する「アクティブ・ラーニング」型授業を行う環境を構築するため、2022年度までにすべての普通教室に無線LANを整備することを目標に挙げている。
しかし、その整備率は未だ3割に足踏みしているとともに、地域格差といった問題も生じている。また、授業で使うタブレット端末も、子どもたち1人ひとりに配備するとなると予算も莫大になるため、現実的には保護者に負担をかけなければ実現は難しいといわれている。
こうした中、1つの解決策として注目されているのが、子どもたちが所有しているスマートフォンを授業で活用する取り組みだ。東京都教育委員会は6月20日、学校へのスマートフォンなどの持ち込みを一律に禁止するのではなく、必要に応じて、学習指導や安全確保のために適切に活用できるようにすることを公表した。
これは、2018年から進めている都立高校における教育活動での個人情報端末活用=「BYOD研究指定校」の研究結果からも、学校の授業においてスマートフォンなどの活用が有効であることが分かっているからだ。
持ち込み禁止はもう古い
文部科学省では携帯電話が主流だった2009年に、『学校に必要ないもの』として小中学校での持ち込みを原則禁止としている。だが、子どもたちが普段使用しているスマートフォンを使えば1人1台端末授業が容易に実現できるほか、タブレットもグループで使う台数のみ導入するだけで済む。後は教室にWi―Fi環境を整備すれば通信料の心配もいらなくなる。しかも、子どもたち1人ひとりに対応した教育が求められる中で、オンライン学習や自宅学習にも活用できる魅力があるからだ。
もとより、PISAの国際比較の結果でも、日本の教育現場におけるICT活用の遅れは、「底辺国」レベルであることが示されている。そんな社会の常識とかけ離れた実態をいち早く解消するためにも、スマートフォンを授業に活用する意義がある。
学校全体の無線LAN整備に、総務省の予算を活用
一方、総務省でも災害時に情報を受発信できる通信手段として、避難所となる学校の体育館など3万箇所にWi―Fi環境を整備する施策を進めている。
学校の無線LAN整備は授業で使用するための普通教室が主体で、避難者が生活する体育館までアクセスポイントが設置されるケースは少ないのが実態だ。そこで期待されているのが、総務省の予算を加味することで自治体の財源を圧縮し、学校全体の無線LAN環境を整備する方法である。
というのも、本事業では災害時の避難計画のある「体育館、特別教室、多目的教室、廊下」等へのWi―Fi整備が補助対象で、普通教室への直接的な整備は対象外になるが、特別教室付近の廊下や住民の避難を想定している廊下等にWi―Fiを整備することにより、その電波を普通教室でも活用できるからだ。
なお、この条件としては、災害が発生した場合は誰でも利用できるようにWi―Fiを開放する必要があるが、こうした機能を搭載した無線LAN機器や、多台数接続が可能な機種も登場している。財源に余裕がない自治体には、本事業を上手く利用して学校施設の機能を高めることも視野に入れてほしい。