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エアコンの省エネ利用を呼びかけ

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施設特集

文科省

目標の設定とルールに沿った運用を
 近年、学校へのエアコン設置が進んでいることを受けて、文科省は5月23日付で「夏季の省エネルギーの取組について」の資料をまとめ、全国の教育委員会と学校現場に通知した。
 学校における普通教室のエアコン整備については、子どもたちの熱中症対策として欠かせないため、昨年度の第1次補正予算で800億円を投じるなど急ピッチで整備が進められている。しかし、そのぶんエネルギー使用量が増大することが予想されることから、電力供給がひっ迫する夏に向けて、学校での適切な使用や節約を呼びかけるのが目的だ。
 「学校でできる省エネ(エアコン編)」と題した資料では、校長、教員、事務職員、教育委員会ごとに省エネルギーへの取り組みを整理した一覧表を用意。その中で、校長に対しては、省エネルギーに対する学校の目標を設定するとともに、その実現に向けてエアコンのオンオフ・温度設定など、誰が操作、判断するのといったか具体的なルールを決めることを求めている。
 また、教員に対しては扇風機やサーキュレーターの併用やブラインドを活用することによって、冷房負荷の低減を図ること。事務職員にはエアコン等を運転させるシーズン前などに定期清掃することや、室外機周辺の風通しを良くすることを要望している。

更新時は省エネ設備の導入を求める
 一方、教育委員会に向けては、近年のエアコンは10年前の機器に比べると消費電力が半分程度になっている機器もあることから、更新時には高効率エアコンを採用すること。契約電力料金の増加を抑えるため、電力の使用状況がわかる装置を導入すること。空調負荷を低減するため、全熱交換器を設置することなどを求めている。
 また、改修工事の際は、外壁・屋上の断熱化や、断熱性や遮熱性に優れたペアガラス、LOW―Eガラス、熱線反射ガラス等を採用すること。直射日光による室温の上昇を抑えるため、外部ルーバーやガラスフィルム、グリーンカーテン等の設置を検討することなど省エネ対策という観点から整備のあり方を示しているのが特徴だ。

今夏には間に合わない?学校のエアコン整備

 年々猛暑が厳しくなる中、小中学校における普通教室のエアコン設置率は約半数にとどまっている。このため、文科省では緊急対策として2019年度までに未設置の学校に整備する方針だ。しかし、一気に受注が加速することで需要過多になり、今夏までに設置工事が間に合わないといった事態も生まれている。
 すべての普通教室にエアコンを設置するとなれば、一校あたりの台数は数十台規模に上り、高圧受電設備等も設置する必要がある。そのため作業が大がかりになり人手が追いつかないことや、平日は授業があるため工事日が限られるといった問題があるからだ。
 しかも、台数が多いと日頃の運用管理はもちろん、保守点検やメンテナンスも計画しておく必要があり、導入には慎重さが求められる。さらに、室内の快適な環境を維持するためには換気機器も併用して導入することが主流になっている。
 つまり、エアコンを整備することは、単に機材を設置すれば済む問題ではなく、学校運営全体に影響を及ぼすといっても過言ではない。したがって、エアコン納入を請け負う企業では、運転制御を一括コントロールできるシステムや、24時間体制で修理を請け負う保守管理の充実など、学校に特化したサービスを提案するところも増えている。
 学校のエアコン設置は急ぐ必要がある。だが、必要な設備だからこそ、使い勝手や維持管理まで見通した導入が大事になる。予算が付いたからといって、深謀遠慮なしの安易な整備だけは避けてほしいものだ。

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