北九州市学力・体力向上プロジェクト奮闘記
16面記事北九州市未来の教育を考える会 編著
行政と現場が同じベクトルで改革
初めて教育委員会事務局勤務となった首長部局出身の教育長が、「上意下達」の風土、積み重なる課題をこなそうとする仕事の進め方、教職員の同質性など、教育の独特な世界に気付くことから「奮闘記」は始まる。
組織を変え、学力と体力の向上を旗印に突き進む教育委員会事務局の本気、校長のマネジメント力、教職員の頑張りなどを、全8章で構成し、伝えた。
例えば、「チェックマンからチャッカ(着火)マンへ」というフレーズ。教委は決めたアクションプランをただ下ろすのではなく、現場の声を聞き、進めやすい環境を整え、現場を巻き込む動きに変わる。「檄を飛ばす」のは、「勝手なことをやる」学校を期待して、リーダーシップの発揮を求めるときだけ。
学力・体力向上推進室の新設、教員らとの先進自治体視察、学力・体力向上推進教員の設置、子どもひまわり学習塾の実施、時短のために動画を配信して反転学習を取り入れた教員研修の開発、事務職員を巻き込む改革など、さまざまな仕掛けがある。
加えて、校長らのリーダーシップが響き、教職員のアイデアなどで、学校変革が加速し、学力、体力が上向いた子どもたちが自信を得ていく様子も、各校のリポートからうかがえる。
行政と現場のベクトルが合致したという記述が随所にある。改革の力は、その関係性の中にこそ宿ることを教えてくれる。
(1620円 悠光堂)
(矢)