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高校生平和大使にノーベル賞を

16面記事

書評

平和賞にノミネートされた理由
「高校生平和大使にノーベル賞を」刊行委員会 編
困難にも諦めず進み続けた20年

 誰かが伝えなければ風化する。
「先生、私たちで原水爆禁止の署名を呼び掛けたいのです」と、相談されたら、あなたはどのように答えますか。「気持ちは分かるけど、高校生として、もっとやることがあるのでは」と、かわしますか。残念ながら、私たちはこうした動きには政治が絡んでいると色眼鏡を掛けてしまう。しかし、未来を生きる青年の純粋な思いからすれば、当然の行為なのである。
 タイトルは「高校生平和大使にノーベル賞を」との願いで書かれている。主権者教育の形骸化による虚しさを感じる中、ノンフィクションの実践が光る。一気に読んで感動した。
 長崎の高校生から始まった行動が多くの出会いを生み、全国へ、世界へと広がりを見せている。テーマは「ビリョクだけどムリョクではない」としている。無理解な大人の中傷や現実の困難さを痛切に味わい、涙も、怒りも、落胆もあるが、諦めないで進んだ高校生たちの二十有余年の結果が、ノーベル平和賞にノミネートされたのである。政治を監視し時代を変えるのは、いつの世も青年であることには変わりはない。よって、追い風を送る教師の、構えが問われているのかもしれない。
 近未来、高校生パワーが世界を変える日がやってくる。そして地球市民の主役は、青年になることは間違いない。だからこそ偏ることなく後押しできる大人でありたい。
(1620円 長崎新聞社)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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