教育は現場が命だ 文科省出身の中学校長日誌
5面記事浅田 和伸 著
教育行政は「縁の下の力持ち」
「教育は現場が命だ」。何より、タイトルが良いと感じた。著者は文科省の現役官僚。過去に3年間、東京都品川区立大崎中学校で校長を務めた。本書の初出は本社編集「週刊教育資料」の連載で、現職の時代に執筆していた「校長日誌」に加筆修正をしたものだ。
日誌の内容を一言でまとめると、「学校現場をもっと元気に! 元気を支えることこそ教育行政の役割」となるだろう。本書では、「教育は、子供たちがいる現場こそが『主』で、教育行政はそれを支える『従』だ。いわば『縁の下の力持ち』『黒子』」とし、現場と行政が心でつながっていなければならないと断言している。
「校長の立場」でまとめた日誌には、文科省への「注文」もたびたび登場。具体的には、各種事業は「行う側の論理」で進められることがあるが時期や設定が学校の実情に合わなければ活用できない、校長会の全国組織の総会では文科相本人にあいさつしていただきたい―といった記述がある。いじめの問題を受けて文科省が緊急調査をした時は、「日本中で多くの教委、学校が、余計な仕事を増やさないでくれよ、と感じたはず」とし、本当に必要なのはマンパワーを増やすことであるとしている。
他にも、校長としての苦悩や挫折も描かれているが、最後は「教育は本当にやり甲斐のある、幸せな仕事」の言葉で締めくくられる。
タイトルと同様、読後感もすこぶる良い。
発行は悠光堂で定価は1800円(税別)。