音を振動・光で体感 企業が製品化
2面記事聴覚支援学校へ提供
富士通は、聴覚障害者が振動や光で音を体感できるよう開発した製品の体験版を、先月から全国の聴覚特別支援学校へ無償で提供している。児童・生徒が音への興味を広げられるようにするとともに、教員の授業中の負担を減らす目的がある。今後、学校現場での課題解決に有効か検証を進める。
同社が開発した「Ontenna(オンテナ)」は、約60~90デジベルの音を256段階の振動と光の強さに変換する。聴覚障害のある人が髪の毛や耳たぶ、襟元や袖口に着けて使うことで、音のリズムやパターン、大きさをリアルタイムで感じることができる。
環境省が示す騒音の目安によると、60デジベルは銀行の窓口周辺や博物館の館内、90デジベルはパチンコ店内に相当する。
聴覚障害者に音を届けようと、同社は平成27年から研究を開始。聴覚特別支援学校などのさまざまな環境で実証を重ねてきた。ウェブサイトには、東京都立立川ろう学校や川崎市立聾学校での活用例を動画で掲載している。
聴覚特別支援学校の児童・生徒は、音の特徴を知覚したり自分でリズムを感じ取ったりすることが難しく、学校の授業でも困難な場面が多くあるという。その一つに、発話の練習で声の強弱をつけにくいことがある。また、音楽の授業で太鼓をたたく際、教員が児童・生徒の背中に触れてリズムを伝えるなどの支援が必要になる。
聴覚特別支援学校での教育活動に活用してもらおうと、全国聾学校長会の理事・評議員が在籍する30校へ、10台のオンテナなどを先行して配布。その他の学校でも同校長会と連携し、普及を目指す。