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未来をはじめる「人と一緒にいること」の政治学

20面記事

書評

宇野 重規 著
感性響き合う中高生向け講義

 女子中高で行われた5回の講義をまとめたものである。まずは、巻末の「放課後の座談―講義を振り返る」から読まれると本書全体が臨場感をもってたっぷりと味わえる。
 難しい事を簡単に説明するのは難しい事である。生徒や学生が理解できないのは教える側に責任がある。しかし、この大原則を惰性と慢心の中で忘れてしまう輩も多い。テレビ放映される政治は若者を意図的に落胆させ誤解させるようにも見える。真摯に取り組む政治家までも信用できないとしてしまう。
 半面、主権者教育は政治の実際を論議できない模擬のため切実感に欠け、行き詰まり感の中、半ば諦めかけていた矢先に本書が出版された。
 中高生電話相談室のような日常会話表記で平易さと親しみが感じられ、その場のやりとりが聞こえてくるようである。
 女子のみの環境での授業実践ではあるが、青年の鋭い感性が響き合い、相互の意識を深めながら発せられる言葉は、命を守り生活を営む賢明な母の姿に重なる気がした。教師の位置やファシリテーターの匠も学べる。
 元号が変わった。その意にふさわしい時代にするのも、身近な生活を政治と関連させる意識改革から始めたい。いつの世も時代を変えるのは青年の熱と力にかかっている。
(1728円 東京大学出版会)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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