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大学入学共通テストに挑む 社会的話題に触れながらリスニング力向上

10面記事

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英語・リスニング
有嶋 宏一 鹿児島県立甲南高校教諭

平成30年度プレテストについて

 今回は平成30年度実施試行調査のリスニング第5問に注目する。技術革命と職業の関係に関する講義内容に関し、図表を活用して解答する問題だ。これはリーディングの第5問にも共通した「図表」活用出題形式である。
 この問題では、生徒は細部をただ理解するだけではなく、図表に合わせて、講義の論点や詳細について再構築し、さまざまな視点から文章を捉え直す「思考力・判断力」が必要とされる。また印刷されたグラフの情報とそれまで聞いた内容を合わせて解答する出題もされた。まさにテキストと図表の総合問題である。
 内容は「馴染みのある社会的問題」。トピックは現在頻出のAIやロボット関連であり、blue―collar

white―collarやSTEMなどの用語が使用された。もちろん、これらの用語を知っている状態で解答すれば、理解度が上がることは言うまでもない。
 大学入試センター発表の問題のねらいを見ると、学習指導要領の目標「論点や根拠などを明確にするとともに、文章の構成や図表の関連などを考えながら読んだり、書いたりすること」が明記されている。今後も図表・グラフを活用した、なじみのある社会的話題についての出題が続きそうだ。そのため、教科書の内容に関連したTEDやrld Economic Forumを授業で取り扱ったり、キーワードをメモし、表にまとめる活動を導入したりするなどの工夫が必要だろう。今後、さらに学習指導要領に示された言語活動等を考慮しつつ生徒に指導していきたいところである。

提案授業
聞いて、メモして、再生する

 まずはリスニングスキルを高めるための活動の紹介である。少し長めの説明等を聞いて、大事なことをメモしたり、またそのメモをもとに表にまとめたりする活動は、実はノートテイキングの技術に他ならない。アカデミックな環境では必要なスキルだが、高校生にとっては結構難しい。授業でキーワードを書きとらせる活動をしても、生徒は最初、「聞きながら書いたりなんてできない!」とよく言っている。
 そんなときに役立つのが、Wajnryb(1990)紹介のDictoglossである(注1)。この活動は、聞いた英文のキーワードをメモして、そのメモを利用して英文をペアまたはグループでディスカッションして復元する活動である。勤務校ではそれを一歩進めた活動「Dicto―Run」を行っているので、今回はそのDicto―Runを紹介する。
 Dicto―Runでは、まず授業前に易しめの英文を準備する。教科書の既習内容をまとめた英文や同じトピックの英文の要約などが使える。また、英検の二次試験で音読する英文も適している(これもオススメ)。英文は極力4文になるように注意する(4人グループにするので、分担しやすくなる)。

 授業におけるこの活動の手順は表1のとおりである。なお、四つの各英文の担当を誰にするかグループ内であらかじめ決めておけば、英文確認(授業展開5)の前に各グループの同じ英文を担当する生徒が集まって確認するジグソー活動も可能になる。

 また、長めの発表も授業で扱いたいところである。発表することによって、英文の構成などについて知ることができ、理解度が深まる。勤務校はSGHということもあり、国連の持続可能な開発目標であるSDGsについてもよく扱っている。SDGsは17の目標で構成されており、A4やB4サイズでポスター壁発表をさせるのにちょうど良い感じでまとまっているサイトも存在する(注2)。ポスター発表やプレゼンテーションは以下のような手順を経ることが多い。
 このDicto―Runだが、活動中に生徒がキーワードを確認しあったり、内容理解をともに深めたり、英語が得意な生徒が他の生徒に教えたりと、さまざまなことが起こる。さらに、この活動の良いところは文法的な解釈を生徒が行うことである。「現在完了じゃなかった?」「冠詞のtheが入ってなかった?」などという会話もよくしており、文法的解釈や細かい部分の聞き取りまで生徒が自然と必要だと感じる活動になっている。
 この活動は月に1、2回行っているが、いつも生徒は楽しそうに行い、また何度でも英文を聞きたがる(普通の授業で英文を読んだりCDを再生したりしても、“Please let us listen again.”などと言う生徒はいない)ので、とても良い活動である。

社会的話題を深めるSDGs発表

 勤務校では、ポスター発表は最終的には自らの課題研究を英語で発表することを目指して行われているため、英語での発表は何度も行って生徒に発表に慣れさせる必要がある。SDGsは達成度をSocial Progress Index(SPI)という指標を用いて確認しており、SPIの各国のスコアカードも公表されている。SDGsについてのポスター発表が終わったら、先進国と発展途上国のスコアカードを比較し、各国について自ら発見した点などを発表する活動も行うことも可能だ。このような活動は一見難しそうに見えても、生徒は興味を持って扱う。なお、SDGsを教えていれば、教科書の内容と関連した発展的な内容も扱いやすくなる。

 (注1)Wajnryb,R.(1990).Grammar Dictations.Oxford=Oxford University Press.
 (注2)https://www.un.org/sustainabledevelopment/why-the-sdgs-matter/

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