田中　博史　著
授業づくりの達人がアドバイス

　著者は、筑波大学附属小学校などで、３７年間授業づくりを研究してきたカリスマ先生である。本書では、著者の投げ掛けにより教育現場の先生方から届いたたくさんの質問や、講演会、サークルから生まれた「今更ですが、こんなことホントに聞いてもいいですか？」という質問に、Ｑ＆Ａ形式でズバリ回答している。共に悩み、語り合う、授業人の仲間が増えることを願って執筆された。
　Part１「日々の授業に悩んでいます！」では、子どもたちの「差」、席替えの頻度や方法、説明役と聞き役に分かれてしまう等の率直な悩みに対し、子どもと真摯に向き合ってきた実績を基に答えている。Part２「算数の授業で困っています！」は、「計算練習では問題の難易度に心配りをする」「概数の教え方では数字の選び方がポイント」等、算数研究の専門家としての助言が参考になる。Part３「自己採点のこと、ちゃんと知りたい！」では、振り返りの大切さや自己採点の有効な方法等が記されている。
　全Partにおいて、全ての子どもが喜び興味深く学ぶための教師のきめ細かい手だてや配慮を大事にしている。「子どもと対話しながら、教師も連続的に変化していく覚悟が必要です」という著者の言葉に圧倒される。若い先生が増えている今、ほんとうに困っていることに答えてくれる本書は貴重である。
（１６２０円　文溪堂）
（谷　智子・高知市教育委員会委員）