深い学びを紡ぎだす 教科と子どもの視点から
16面記事グループ・ディダクティカ 編
授業形式の自己目的化に警鐘
2017年2月に公表された学習指導要領の改訂案で突然、姿を消したアクティブ・ラーニングが、「主体的・対話的で深い学び」になったことは周知の事実である。これらの背景を述べながら、特に「深い学び」に特化した教育論、教育実践論の数々を収めたのが、本書である。
例えば第9章の村井淳志氏の論考は、アクティブ・ラーニングの自己目的化に疑義を示す。<生徒が「能動的」であるためには、考えたくなる、調べてみたくなる、答えを求める努力に価する、学習課題が提示できるかが、第一に問われなければならない>
まっとうな授業論で、ややもすると形式的な流れに終始しやすい授業展開に対する批判になる。また第8章の森脇健夫氏の論考は、授業の冒頭にめあてを示す昨今の授業の形骸化に言及する。この授業冒頭のめあて提示は、行政指導で勧められたと森脇氏は指摘する。考えてみれば評者は現職時代に、授業の冒頭でめあてを示すことはしなかった。また感動を受けた名人級の指導者の授業でも、そんな場面はなかった。めあての提示一つ取っても、およそ「深い学び」とは縁遠い形式的な授業が、現場で展開されていると想像してしまう。
本書は新教育課程のキーワードになっている「深い学び」について論じた好著である。
(2700円 勁草書房)
(庭野 三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員)