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学校施設における防災力の強化を

11面記事

施設特集

~避難者を受け入れる体育館の環境整備に課題~

災害時に避難所となる学校施設
 熊本地震では、最も多いときには熊本県の全人口の10%以上が避難し、多くの避難所が設置された。学校施設についても多くが避難所となり、たとえば熊本市では336校に約6万人が避難している。このように児童生徒の学習・生活の場となる学校施設は、大規模災害時には地域住民の避難所としての役割も担うことから、その危険を未然に防ぐ機能・設備を早急に備えることが求められている。
 このため、文部科学省では物資の備蓄や非常時に使えるトイレ、通信設備などを備える「学校施設の防災力強化プロジェクト」を平成24年度から継続的に実施し、防災機能の強化に取り組んできた。また、総務省でも学校等の避難施設における Wi―Fi環境整備の推進として補助金を交付するなど後押ししている。

まだ足りない、防災機能の整備
 しかし、文部科学省の平成29年4月1日時点の調査によると、公立小中学校の95・7%が避難所に指定されているが、そのうち非常用電力等の防災機能(設備)の整備割合は50~80%程度。あるいは、スロープ等による段差解消や多目的トイレの設置など要配慮者の利用を想定した整備割合も30~65%程度に留まっているなど、未だ十分とはいえない状況だ。
 したがって、文部科学省では「今後も防災担当部局が中心となって、避難所として想定される学校ごとに、その位置付けや役割を地域防災計画上明確にした上で、学校の防災機能強化のために必要な施設設備等の整備を推進する必要がある」と早期の対策を要望している。何より学校の防災機能を強化するためには、学校施設予算のみならず、防災関連予算や下水道予算、情報通信関連予算といった各分野の予算も活用しながら整備していくことが必要だ。

空調設備に乏しい体育館
 その中で、避難者を受け入れる体育館の大きな問題点の1つは、空調設備がないことである。過去の災害では被災者が数週間から数カ月にわたって利用するケースもあり、気温の高い時期に起きた場合の暑さ対策は必要不可欠だ。しかし、これだけ広いスペースに設置するとなれば、予算も大きく膨らむのも事実。このため、まずは平時での熱中症対策と併せて大型扇風機やスポットクーラー、冷水機などを導入する自治体が増えている。
 また、被災者が生活する上で欠かせないトイレは、精神的なストレスや感染症など衛生上の不安をなくす意味からも、断水時にも使用できるマンホールトイレを整備するとともに、仮設トイレや簡易トイレを十分用意するなどの対策を講じる必要がある。しかも、高齢化が今後より一層進むことを考えると、要配慮者への対応も必ず想定しておくべきである。
 加えて、避難者の生活拠点となる学校の体育館は吊り天井を有する施設も多いことから、天井材や照明など非構造部材の落下防止対策、ガラス等の飛散防止対策も耐震化とともに重要になる。いくら災害時の備えを進めても、肝心の建物自体が使えなくなってしまっては本末転倒になるからだ。
 一方、このようなインフラ整備と同時に重要なのが、いざという時にいち早く避難所を開設し、適切な運用を図る体制づくりになる。そのためには日頃から行政と地域が一体となり、定期的な防災訓練等を通じて具体的な役割分担を決めておくなど、連携を強化しておく必要があるだろう。

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