玉川大学教職専門シリーズ
工藤　亘・藤平　敦　編著
「支導」という視点を提示

　本書に類する書籍は多い。文科省発行の指導書や参考文献だけでも十指に余る。そんな中で本書は何をアピールしたいのかを読書課題にして読み始めた。そして…大丈夫、これは評価できる、生徒指導・進路指導に必要とされるきめ細かい配慮が行き届いている、そんな読後感に至った。
　特徴が三つある。まず初めに、著者の造語だそうだが、「支導」という視点で切り込んでいることである。この言葉に紙面を割くゆとりはないが、本書を手にしてじっくり味わってほしい言葉だ。理解を助ける図や表も示されている。ちなみに、他の章でも図表が非常に効果的に配置されており、理解する上で助けとなっていることを補説しておきたい。
　次に、子どもたちの発達段階を考慮して縦断的に捉えていることだ。小学校低学年、中学年～高校まで５章仕立てとなっており、単独でも意味深く読める。また、２０３０年代を見通す終章にも引かれる。
　そして、コラム欄だ。コラムというより、コンパクトかつ濃密な論文集である。本文を読んでいるとコラム欄へ誘われる。有益な情報を得られる仕組みになっている。
　本書は教師を目指す学生たちの教材でもあろう。各章末に学習課題が示されている。学生ならずとも「読み飛ばし」はできない。じっくりと読んでほしい。この仕掛けもいい。
（２５９２円　玉川大学出版部）
（八木　雅之・元公立小学校校長）