スポーツするえほん
14面記事中川 素子 著
運動の魅力伝える60冊を紹介
本書は、一口に言えば絵本の書評集だ。絵本といえば、いわば幼児・児童対象であり、大人のわれわれから見れば、さっと読んでおしまい、あるいは読み聞かせるといった用法ぐらいしか思い浮かばないだろう。ところが、本書を手にして、その奥深さに目を開かされた。
言うまでもないが、絵本は「絵」が売り物だ。作者は、場面構成、その動き、色合い等に神経をすり減らす。添える言葉も少ないだけに練りに練られている。著者はその意図を擬人化、擬態語や擬音語の使い方の妙が子どもたちの関心と結び付いていることを解き明かす。なるほど、とうなずく自分がいた。
次いで取り上げたいのが書名にある「スポーツ」である。幼児がスポーツとは大げさでは、との思いもあるだろうが、著者は「楽しく元気なこと」が真のスポーツの心では、と訴え、緩やかなくくりで捉えている。そして、体を動かす楽しさ、運動会やオリンピック、伝統の力など著者なりの10個の項を立て、何と60冊の絵本を紹介する。
紹介の仕方もユニークだ。絵本の表紙、そして主たる見開きページをカラーで載せ、それに合った物語を展開する。絵本を手にしている感覚で読めるのだ。
絵本を分析する視点、それは自らの子育て体験、孫を見守る祖母という目だ。だからなのか、読後がほんのり温かい。
(1944円 岩波書店)
(八木 雅之・元公立小学校校長)