「学びの公共空間」としての公民館 九条俳句訴訟が問いかけるもの
16面記事佐藤 一子 著
大人の学習権、戦後の変遷も
公民館職員(館長・主事等)に学校教職員が補職されたり、定年後、再就職したりすることがある。教委社会教育担当者には、公民館運営についての苦情や注文が多く寄せられると聞く。
公民館は何をしている所なのか、なぜ大切な場所かを考えよう。本書の副題は“九条俳句訴訟が問いかけるもの”と付く。九条俳句訴訟については本書の第Ⅰ部で、その経緯がまとめられる(最高裁第一小法廷で不掲載違法が確定、平成30年12月20日)。
本書は、序章、第I部、第II部、第III部、終章の構成で、全約180ページ。著者(東京大学名誉教授)は、社会教育学、生涯学習論の研究者として広く知られる人。序章では、地域にねざす社会教育施設(公民館)を(1)社会教育の組織化(2)学習権の保障を中心に述べる。
そして第I部が「九条俳句訴訟と学習権の思想」で“社会教育の自由”(学習、表現の自由)、大人の学習権、公民館のあり方を説く。続く第II部では、戦後公民館のあゆみにスポットを当て、“学びの公共空間の再構築”に話は進む。第III部は“主権者としての学びを育む”ための「現代的課題に関する学習」がテーマ、そして終章は、「グローバル時代の『学びの公共空間』をひらく」である。教育関係者が読んでおきたい一冊。
(2052円 岩波書店)
(飯田 稔・千葉経済大学短期大学部名誉教授)