日本の漫画本300年
15面記事「鳥羽絵」本からコミック本まで
清水 勲・猪俣 紀子 著
代表作で知る大衆文化の変遷
書店のコミック本、ストーリー漫画本を並べた書棚は、増加・拡大の傾向。一方、教育書の書架は縮小気味か。漫画本の歴史を知ることは、子どもの生活や子ども文化を話し合うとき、教師の誰もが承知しておきたいことであろう。「『鳥羽絵』本からコミック本まで」と副題の付く本書は、漫画本の歴史で知る大衆文化史を紹介する。
江戸期から平成期までの漫画本の代表作を、豊富な図版とともに紹介するのが本書。7章構成で、1章が江戸期。続く2章が、明治期である。子ども向け漫画本は、この時期に登場する。ただし、どれほど読み手が広がったのか。新聞に子ども漫画欄も登場する。大正期を扱うのは3章。「一平本から4コマ本へ」と小見出しが付く。そして、4章が昭和戦前期。「講談社本から中村書店本へ」だ。単行本(全10巻)の「のらくろ」は一冊1円。子どもが気軽に購入できたのだろうか。
戦後の“昭和20年代”を一つの章にまとめたのが5章。横井・手塚本と赤本漫画の時代。手塚治虫の登場だ。6章が昭和戦後期。マガジン、サンデー、ジャンプの子ども向け週刊誌が創刊される。劇画本からコミック本へ移行していく頃か。そして、平成期が7章。ストーリー漫画本の多様化だ。それがどのようなものかは、休み時間の子どもに聞くといい。
(3024円 ミネルヴァ書房)
(飯田 稔・千葉経済大学短期大学部名誉教授)