企業が子どもたちに体験の場
14面記事夢や志を育む2社に文部科学大臣賞
民間企業の社会貢献活動の一環として、学校教育への支援や、子ども向けの社会教育事業が広がりつつある。文科省は、そうした企業・事業の表彰を始め、本年度はテレビ東京(東京・港区)、長坂養蜂場(浜松市)が文部科学大臣賞を受賞した。どちらも子どもたちへの職場体験の場を提供。テレビ東京は特別支援学校を含めた学校教育を支援し、長坂養蜂場は7月の連休期間などに小学生を招き、年々、人気を集める。
テレビ東京
支援学校生にアナウンス体験
テレビ東京は大企業部門での受賞。「テレビ東京の校外学習」と名付けて全国の学校から申し込みを受け付けている。小学校5年生から高校3年生までが対象。「見学」とは別に位置付け、キャスター室でアナウンス原稿を読んだり、テレビカメラを担いだりする。
この事業を「すべての子どもたちに届ける」とし、職場で児童・生徒を受け入れるとともに、必要とあれば社員が学校に出向いて、校内でテレビ局の仕事を体験してもらってきた。
昨年は9月に、特別支援学校の生徒を受け入れた。テレビ東京が設けている同事業のウェブサイトによると、車いすを使って生活を送る生徒たちが生放送終了直後のスタジオに入り、原稿を読むなどした。
移動の際に介助が必要な子どもたちの受け入れは初めてで、申し込みを受けた際は出張授業を提案した。学校側からは、「普段なかなか外の世界に触れることがない子どもたちにテレビ局の世界、外の世界に触れさせたい」という思いが返ってきた。
1年間をかけて準備し、車いすでの移動ルートを確保し、排せつ介助の準備なども進めた。障害の特性に応じた弁当を作ってくれるレストランを探して発注するなど、普段以上に気を配って当日を迎えた。
出張授業では、学校に設けたスクリーンに社員の中継映像を映し、中継かと思わせておいて、実際に社員が子どもたちの前に現れるという「サプライズ」から授業が始まる。
その後、校内でアナウンス原稿を読んでもらったり、重くて高額なカメラを担いでもらったりする。
長期入院している子どもたちのための特別支援学校の場合は、病室で体験できるようにした。今後は、不登校の子どもたちが利用しているフリースクールなど、対象の幅を広げていきたい考えだ。
表彰に当たっては、「すべての子どもたちに届けるというテーマで対象を広げた。人員を増やし体制を強化したことが評価された」との講評があった。
長坂養蜂場
生態から採蜜、食品加工まで
長坂養蜂場は、「夏休み子ども採蜜体験教室」の名で、昨年は「海の日」を含む3連休に小学生を募った。防護服を着て巣箱から、巣が形成されている「巣板」を取り出したり、その板を遠心分離機にかけて、蜜を集めたりする。
これに先立ち、ミツバチの生態や蜂蜜の栄養、ミツバチの扱い方などについて学ぶ。採蜜を体験した後は、ホットケーキにかけた蜂蜜を味わう。
表彰式では、この事業について長坂善人社長が発表。養蜂家を目指している中学生を紹介した。
この中学生は小学校3年生の頃から4年間にわたって採蜜体験に参加してきた。中学生になってからは、学校の職場体験で同養蜂場を希望し、受け入れてもらった。ミツバチに関する研究機関がある大学への進学を目指して、毎朝3時半に起きて勉強しているという。
表彰に当たっての講評では、「養蜂業とはどのような職業かという視点だけでなく、生態系、食品加工など一貫して体験することが高い評価を得た」とのことだった。
この表彰事業は平成25年度に始まった。社会貢献活動の一環として青少年の体験活動に関する優れた実践を行っている企業を表彰するというもので、これまでの受賞企業とその事業はウェブサイトで紹介している。