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びわ湖のほとりで35年続くすごい授業

12面記事

書評

滋賀大附属中学校が実践してきた主体的・対話的で深い学び
山田 奨治・滋賀大学教育学部附属中学校 著
生徒主体、学年の枠超えて

 新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」を確かなものにするためには、「総合的な学習の時間」をいかに充実させるかが鍵になると思う。本書の滋賀大学教育学部附属中学校は、総合的な学習の時間の先駆的学校であり、その実践は35年にも及ぶ。本校の「総合学習」は「BIWAKO TIME」(BT)、「情報の時間」、「COMMUNICATION TIME」(CT)の三つの内容があり、その柱となっているのがBTである。BTでは、琵琶湖や滋賀県をフィールドに、生徒が自ら設定したテーマで、学級や学年の枠を超えた学習グループをつくり、「情報の時間」の学びと連携させて探究型の学習を行う。これらの学習を全教員が協働で展開しているところがすごい。思考ツールの活用や面談等で教員が生徒にしっかり関わり、生徒のテーマ設定に時間をかけている点や、研究交流会(発表)後にも学習の振り返りを十分行っている点も素晴らしい。
 「総合学習」で身に付けた知識や技能が、教科の学習をより自発的で参加型のものに変えていく過程、その影響が生徒のみならず教員にも及び、教員の授業スタイルも変化していく過程、すなわち、新学習指導要領がいう「主体的・対話的で深い学び」が目指す方向へと変化する過程が紹介されている。新学習指導要領の趣旨に沿う授業を行うために、ぜひ本書を参考にしたい。
(2376円 ミネルヴァ書房)
(谷 智子・高知市教育委員会委員)

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