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知財創造教育【第2回】求められる人材・能力

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 「新たな価値創造を行える人材」(注1)、「新たなビジネスを創造する人材」(注2)。
 2018年6月に政府内であいついで取りまとめられた報告書には、このような表現が登場しました。20世紀型の工業社会から、21世紀型の情報社会、超スマート社会、そして「価値デザイン社会」(注3)へと変革している中、新たな社会に求められる人材像も変化しています。
(文=仁科雅弘・内閣府知的財産戦略推進事務局参事官)

 20世紀型社会と21世紀型社会の大きな違いの一つは、社会変革の主導権がモノやサービスを供給する側から、これらを消費したり利用したりする需要側に移転したことにあります。20世紀型社会の下では、旺盛な需要に供給力が追い付かない状況であり、よりよいモノやサービスを供給すれば世の中に浸透し、それに伴って社会が豊かになってきました。
 このような社会では、コスト削減や機能向上といった所与の課題を着実に解決する能力や、規定された業務を与えられたルールの下で着実に遂行する能力等が求められ、そのような能力を有する人材を社会に供給すべく、知識重視型、一斉・画一型の教育が行われてきました。
 しかしながら、21世紀型社会の下ではモノやサービスが溢れ、低廉又は高品質であっても需要側から選択されない限り、それらは世の中には浸透せず社会に影響を与えるようなことが起きないようになっています。このように需要側に選択権が移行したことで、需要側の価値観はますます多様化する傾向にあります。
 また、人工知能やロボットに代表される技術革新により、モノやサービス自体も高度化・複雑化しています。しかも、モノやサービスは国境を越え、世界的規模で同様な現象が発生している状況です。このような社会では、需要側のニーズにマッチしたモノやサービスを提供するというアプローチだけでは最早十分ではなく、モノやサービスの提供を通じて共感を生み、需要側が「こういったものが欲しかったんだ」といったように自らの潜在的なニーズ(ウォンツ)に気づかされるようなアプローチが必要になっています。

 では、21世紀型社会では、どのような能力が求められるのでしょうか。まずは、人々の共感を得られるようなことを考えたり伝えたりする能力が必要でしょう。共感を得るためには、リアルな体験やビジョンを提供する能力も必要となるでしょう。また、人工知能を使いこなしつつ、人工知能には難しい新たな課題を設定したり解決手段を見出したりする能力、答えが存在しないことや答えが一つではないということを受け入れて対応する能力、世の中の人たちが必要とする仕組みやルールを構想し実現に向けて行動する能力なども求められるでしょう。
 これらに共通するのが、人間ならではの能力を生かして、人間にとって価値のある新たなモノやコト、すなわち知財を創造し、提供していくことなのです。また、知財の創造や提供を単発的なものとせず、繰り返されるものとするためには、創造や提供された知財が尊重されることが必要です。この知財を尊重するということは、他の人との違いや多様性を認めることにもつながります。

 「知財創造教育」は、「『新しい創造をする』こと、『創造されたものを尊重する』ことを、楽しみながら理解させ育む教育」であり、その実践が、子どもたちが21世紀型社会の下で人間らしく豊かに暮らしていくために求められていると認識しています。

 次回は、知財創造教育と学習指導要領との関係について説明します。

(注1)知的財産戦略本部、「知的財産戦略ビジョン~『価値デザイン社会」を目指して~」、2018年6月12日、p.44
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizai_vision.pdf

(注2)Society5・0に向けた人材育成に係る大臣懇談会、「Society5・0に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」、2018年6月5日、p.6
http://www.mext.go.jp/a_menu/society/index.htm

(注3)前掲(注1)、p.38、「経済的価値にとどまらない多様な価値が包摂され、そこで多様な個性が多面的能力をフルに発揮しながら、『日本の特徴』をもうまく活用し、様々な新しい価値を作って発信し、それが世界で共感され、リスペクトされていく」ような社会

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