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高校・大学における発達障害者のキャリア教育と就活サポート

12面記事

書評

小谷 裕実・村田 淳 編著
「就労」「暮らし」見据えた支援

 障害者雇用のデータが公的機関でも粉飾されていた。その建前と本音が現在日本の実相である。誰でも突然、障害者になる、または当事者と関わることは否定できない。当事者になって取り巻く環境や言動が変わることに気付く。就労支援の種類は? 日当は? 療育手帳は誰でも得られるの? こうした疑問に回答できる教育者は限られている。また、労働者確保として考えるのか、人権として考えるのかで視点は変わる。
 キャリア教育の適切な指導者が不足している。適切とは、経験や専門性はもちろん、眼前の一人と関わり、同じ目線でサポートし、自立を見届ける腹構えが根底にあることを指している。本書は、当事者はもちろん、家族、支援者、行政、政治家の必読の書といえる。なぜなら多くの思い込みや、決め付けや、諦めという既成概念を砕く必要があるからである。
 教育、福祉、医療、心理などの分野の専門家が、発達障害者の高校・大学における支援、その後の就労支援、生活支援について述べており、何よりも「働くこと」「暮らすこと」を意識して編集構成を行っている。
 発達障害のキャリア支援に追い風を送りたいとの思いでリニューアルされただけあって、就労への意識に覚醒を起こす内容となっている。本質が見えているから平易に表現できる漫画が4回登場する。そこから目を通すと、何と深くて面白く、納得ができる。画期的な秀書と私は評したい。
(2160円 黎明書房)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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