日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

取材ルポ 安全で快適な空間づくりに向けて

12面記事

施設特集

国立大学法人筑波大学・剣道場での天井材

各大学で進む天井材の導入事例

 屋内運動場など学校施設における特定天井の落下防止対策が進められる中、熊本地震で被災した施設でも採用されるなど、今注目を集めているのが旭ビルト工業(株)(本社=東京都大田区)の「超軽量・システム天井SLC工法」だ。そこで、同社のSLC工法を導入したある国立大学の事例を紹介する。

重量2kg/平方m以下を実現、高い吸音性も

 「広大な敷地の中にさまざまな教育・研究棟を有する大学には、特定天井の対象となる建物も数多くあるため、計画的に耐震工事を進めているところです」と施設部の担当職員。特定天井とは落下すると重大な危険を伴う吊天井のことで、高さ6m、面積200平方m、2kg/平方mを超えるものが対象になり、構造の安全性を検証、確保することが義務づけられている。
 その中で、平成29年から30年にかけて「超軽量・システム天井SLC工法」による耐震工事を実施したのが、講堂(最大収容千6百人)と武道館(柔道場・剣道場)になる。本システムは天井板に軽量で柔らかい、化粧グラスウール天井板を使用することで、平米重量2kg以下を実現しているのが特徴。「今回の天井耐震化で重視したのは、軽量化によって万が一落下しても重大事故にならないようにすることでした」と続ける。
 その上で、施設部の担当職員が必要としていた性能が、高い吸音性だ。竹刀のぶつかりあう音やかけ声が響きやすい剣道場では、これまでも天井に吸音材を貼って対処していたほど。しかし、吊天井を外すだけだと空調効率や見た目にも問題が生じるという課題があった。
 それだけに、耐震化と併せて吸音効果が引き出せるのは大きなメリットだ。さらに、それぞれの道場に合わせた木目調のデザインが、武道場の雰囲気を損なわない一体感のある仕上がりになっている。吸音性、断熱性、意匠性にも優れているのが、本システムのもう一つの特徴だ。

複雑な構造の天井も短工期で

 一方、講堂はグラスウールらしい白さが強調され、改修前よりも明るい印象に生まれ変わった。天井の形状が複雑なため設置にも苦労したと思われるが、スムーズな施工は大学側の要求に沿うものであったようだ。
 こうした大きなホールの天井耐震化は、空調ダクトや照明をかわしたりする工期がかかる上、コストも跳ね上がってしまうのが一般的だ。しかし、施工しやすい軽量天井なら短工期で済むためコストも抑えられる。とりわけ、学生はもちろん地域の利用など稼働率の高いキャンパスにとっては、なるべく工期を短くしたいもの。つまり、これらに応えられるのも「超軽量・システム天井SLC工法」の長所であり、学校施設での採用が増えている理由だろう。


国立大学法人筑波大学の講堂に取り付けられた天井材

施設特集

連載