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柴山昌彦文科相 本紙単独インタビュー(インタビュー動画あり)

2部1面

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学力の3要素重視し高大接続改革
変形労働時間制をオプションに
柴山昌彦文科相に聞く

 新年を迎えるに当たって柴山昌彦文科相は本紙単独インタビューに応じ、教職員の長時間勤務への対応や、新学習指導要領への移行に向けた考えを語った。中央教育審議会が長時間勤務への対策として提言する見込みとなった「1年単位の変形労働時間制」に関しては、職場環境改善のための選択肢を増やすものと位置付け、そもそもの業務量の削減を引き続き目指す意向だ。

 ―教職員の働き方改革についてお聞きします。これまでの中央教育審議会による審議を踏まえて、どのような点が課題だと思いますか。
 質の高い学校教育を維持発展させるために教師の業務負担の軽減を図ること、教師でなければできない業務以外の、多くの仕事を先生方が担っている実態を根本的に改めること、教師の業務の役割分担を実行することで、子どもと向き合う時間を確保することが重要だと思います。

 ―時間外勤務手当の代替として支給している教職調整額について、また、時期によって1日当たりの労働時間を変える「1年単位の変形労働時間制」についてどうお考えですか。
 それぞれ中教審で審議してもらっているポイントです。その中でまず(教職調整額を定めている)給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の基本的枠組みを前提とした上で業務の明確化、適正化に徹底的に取り組むことが基本的な議論の方向性だと理解しています。調整額の水準は不十分という指摘はあると思いますが勤務実態を追認するのではいけません。
 まず、勤務時間縮減のための施策を総合的に実施することで学校における働き方改革を着実に実施することを優先します。
 変形労働時間制は、導入することで教師の業務や、勤務が縮減するわけではないのです。以前のような、夏休み中の休日まとめどりといった方策にも有効ということで検討が進められてきました。現行制度では認められていないようなオプションを認めてはどうかという提言だと思っています。
 では、長時間勤務をどうするかというと、変形労働時間制の導入と合わせて長期休業期間中の業務量を着実に削減し、夏休み中もさまざまな業務があるという実態を何とかしないといけません。学期中も現在より長時間の勤務にならないようにすることを並行して進めていかなければなりません。

 ―新学習指導要領では小学校3、4年生に教科外で外国語活動が、5、6年生に教科として外国語が導入されます。文科省としては今後、どのような対応を考えていますか。
 児童が質の高い教育が受けられるようにするための環境整備が重要になってきます。外国語の習得のための新教材の整備、教員の養成・採用・研修の一体的改善、学校指導体制の充実、それぞれ、総合的に支援することが重要です。
 教師用の指導書、学習指導案例など、授業準備に役立つ資料を含めた新指導要領に対応した教材などを整備し、また、各学校で指導の中核となる教師の指導力や専門性の向上、専科指導のための教職員定数の充実、外国語指導助手などの外部人材を活用支援していく、こういったことに取り組まなければならないと思っています。

 ―英語の4技能に関する指導は小学校に限らず、各学校段階で求められています。どう対応しますか。
 外国語によるコミュニケーションのためには生涯にわたってさまざまな形で指導することが必要になってきます。小・中学校、高校を通じて、「聞く」「読む」「話す」、このうち、「話す」には「やり取り」と「プレゼンテーション」、そして「書く」、そういった4技能、あるいは5技能について領域別の目標を設定することが大切になってきます。
 具体的には小学校で言うと、中学年から外国語活動を導入して聞くこと、話すことを中心として英語に慣れ親しみ、その上で高学年から教科として系統的な指導を行うことになります。
 中学校では、対話的な言語活動を重視して、授業を基本的に英語で行うことになります。高校では5領域を総合的に扱う科目群、あるいは発信能力を高める科目群などを設定することが提言されています。大学入学者選抜においても英語の4技能を評価するための準備が進められています。新指導要領の実施に向けては、教材の整備、指導体制の充実など、教委と連携して、環境整備に努めたいと思っています。

 ―大学入試改革を巡っては課題も指摘されています。今後、どう進めますか。
 詰め込んだことを吐き出すだけの入試では、混沌とした状況の中で問題を発見し、これまでにない中で答えを見いだすことができません。そういったことができるようにするための資質や能力をどう測るかということが大事です。
 具体的には学力の3要素を重視して高大接続改革を進めなければいけません。2020年度から大学入試センター試験に代えて、記述式問題を含めた大学入学共通テストを導入します。
 英語については4技能評価を、民間の資格・検定試験を活用して行うことを着実に進めるとともに、生徒の多様な学習や活動履歴の評価を充実させるという個別選抜の改善に取り組んでいるところです。

 ―民間資格試験の導入を巡ってはさまざまな議論があります。導入しない方針を決めた大学もあります。このような動きについてどう思われますか。
 各大学がどのような選抜を行うかは、各大学のアドミッションポリシーに基づいて決定されるべき事柄ですが、文科省としては、英語力向上のために、引き続き各大学に資格検定試験の導入を粘り強く促したいと思っています。

 ―このところ、教職員定数の改善計画が策定されていません。今後、中長期的にはどうお考えでしょうか。
 昨年3月に法律を改正し、発達障害のある児童・生徒などのための通級指導、外国人児童・生徒への日本語指導教育などについては加配の定数から、対象となる児童・生徒数に応じて変動する基礎定数となりました。基礎定数化は平成29年度から10年間、計画的に進めることで2026年度には、通級指導で言うと、対象となる児童・生徒16・5人に対して1人の配置から、13人に1人に改善されます。
 本年度は小学校の英語教育のための専科教員の千人をはじめとして1595人の定数改善を行い、教師の業務負担軽減のために中学校における部活動指導員やサポートスタッフの配置によって対応しています。引き続きこういった取り組みを推進したいと思っています。

 ―文科省は昨年、不祥事に揺れました。どのように省内改革を進めますか。
 国民の信頼を回復するために、(文科省が設けた)調査検証チームの中間まとめに書かれている事柄、具体的には法令順守の組織文化、国民の視点を重視する組織文化、風通しの良いコミュニケーションができる組織文化などを根付かせることが大事です。
 私を本部長として設けた文部科学省創生実行本部で、文科省が行うミッション、ビジョンを見詰め直し、再定義した上で、法令を順守し、風通しの良い組織文化、組織体制を構築し、さらに行政官としての在り方や働き方を改革することで再発防止策を含めてこれからの方向性を見いだしたいと思っています。
 特筆すべきは、省内公募で(集まり)若手(職員)中心に構成されるタスクフォースから省改革に関する提言を頂いたことです。省改革専属組織の設置、求められる能力の明確化、360度評価など、大変に意欲ある提言を頂きました。しっかりと受け止めて、私自身が先頭に立って、実行本部の議論を生かしたいと思っています。

 ―学校現場に一言お願いします。
 今、先生方は本当に貴重な、将来の人材(の育成)を担う仕事をしていながら、大変な思いをされている部分も多いと思います。そうした努力が報われる、そして、子どもと向き合って幸せを感じられる文部科学行政にするために全力を尽くしたいと思っています。
(聞き手=記者・佐原啓仁)

 しばやま・まさひこ 東大卒。弁護士。平成16年から衆院議員(自民)。総務副大臣などを経て昨年10月から現職。53歳。

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