日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

本紙電子版PRし100キロのトレラン!Funtrails2018(8)―深夜に見えた「幻」は

NEWS

pick-up

 西武鉄道の西武秩父駅から飯能駅まで特急に乗れば40分ほど。距離にして約35キロである。トンネルも使った最短距離だが、今回のレースはときに回り道をしながら上ったり下ったり。記者の場合は16時間をかけてようやく飯能市街地にたどりついた。そして再び秩父へと戻るのだ。
 夜9時を過ぎても市街地はそれなりににぎわっている。が、道路を外れ、山に入ると、そこは闇である。
 次第に眠くなってくる。この日の朝は3時起き。以来、ひたすら山を登り、下ってきた。道ばたのベンチであおむけになり、あるいは、林の中でかがみ込んで、眠りに陥る選手が目につくようになってきた。
 この大会への出場を申し込んでから、身体づくりと共に努めてきたことがある。カフェイン摂取の抑制だ。夜を徹して走る大会のために一切、カフェインを絶つ選手もいるらしいが記者の場合は、コーヒーを日に一杯に抑えた。
 ところがエイドステーションに用意されたコーヒーはミルク入り。記者の場合は、ミルクにより胃腸に障害をもたらすおそれがあり、飲まないまま、山に入ってしまったのである。
 疲れに加えて眠さとの戦いに突入。意識が遠のく中、行く手に煌々と輝く建物が見える。もう深夜なのにカフェ?徹夜のレースでは、しばしば、幻が見えるという。ついに記者も、見えてしまったのか?
 近づくに連れ、ますます、明るくなる。登山道が終わり、舗装路に出た。カフェに見えた建物はトイレだった。こうした山の中のトイレも、快適に利用できるよう、新築したらしい。幻ではなかったのだ。
 しかし、なぜ、こんな場所に。見渡すと、集落の端だったことが分かった。「ここなら自動販売機があるのでは」と歩みを進めるまでもなく、すぐに稼働中の販売機が目に入る。
 ブラックの缶コーヒーがいつも以上にうまい。飲み終えると、カフェインが利いてくる。この1缶で、すべてが一転するのだった(午前零時ごろ、残り40キロ)。

pick-up

連載