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危ない「道徳教科書」

12面記事

書評

寺脇 研 著
「押し付け」道徳、なぜ横行

 「小学校で2018年度からスタートした『道徳』について、主に授業で使用される教科書の内容と成立過程に注目しながら、道徳教科化の問題点について検証を加えた」と“はじめに”のページで著者は述べる。そして、本書の構成は「『押し付け』道徳」が第1章。「星野君の二塁打」「手品師」「かぼちゃのつる」を例に、教科書(8社)の横並びはなぜかということに話を展開する。続く第2章は、「『道徳教育』の戦後史」だ。1958年の「道徳の時間」設置から今日までの状況(時の流れ、政治と教育の関わり等)が、まとめられている。
 「『検定』と教育現場」(第3章)で、小学校道徳教科書の「占有率」一覧に注目。その詳細は110ページ以下にある。読者としては、知っておきたいことでもある。続く第4章で「『評価』と『教科書採択』」。教師の間に出回る「評価文例集」を見れば、手探り状態で評価法を模索する現場の様子を誰もが知るはずだ。「『道徳』で何を学ぶのか」(第5章)で、著者は道徳教育の在り方として、著者の理想とする形を提示する。さらに“あとがき”では「教科書『を』教える」のではなく、「教科書『で』教える」と教師に呼び掛ける。著者はかつて文科省に在職した人。教師は幾つもの立場が違う人の著書に学ぶことが必要だ。(1512円 宝島社)
(飯田 稔・千葉経済大学短期大学部名誉教授)

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