寮や合宿所で生活する人は注意が必要な髄膜炎菌感染症
11面記事 健康な人の鼻やのどの粘膜にも存在している髄膜炎菌が、血液や髄膜に侵入して全身にひろがると髄膜炎菌感染症を引き起こす。急激に症状が進行し、治療開始のわずかな遅れが致命的な結果につながることもあるこわい感染症だ。
好発年齢は乳幼児と10代後半と高齢者だが、健康な10代でも死亡するケースがある。人と人との接触が密な場所で発生しやすく、学生寮や運動部の合宿所などの共同生活、食器やコップなどの共有などがリスクとしてあげられる。
この10年間の集団発生の例を見ても、学生寮などで感染リスクが高いことがわかる。2011年、宮崎県の高等学校の運動部寮では、寮生と職員計5名が診断され、うち1名が死亡した。2015年、山口県で開催の世界スカウトジャンボリーに参加したスコットランドとスウェーデンの隊員が帰国途上に発症した。2017年、神奈川県の全寮制学校では、1名が死亡、濃厚接触者42名のうち10名が髄膜炎菌を保菌していた。
髄膜炎菌感染症は、発熱や頭痛などのかぜに似た症状から始まるため早期診断が難しく、進行が早いのが特徴。発症から24時間以内に錯乱・せん妄、意識低下を来して急速に悪化するため、対応の遅れが致命的な結果につながることもある。その致命率は19%といわれている。早期に診断され、適切な治療を受けた場合でも、発症者の5~10%は24~48時間以内に死亡する。回復した場合でも、11~19%で聴覚障害、神経障害、循環不全による壊死が原因の手足の四肢切断などの生涯続く後遺症が残るとの報告もある。
髄膜炎菌感染症の予防には、ワクチン接種が有効だ。アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアでは定期接種となっている。日本では、2015年から国内承認ワクチンが受けられるようになった。任意接種で有料だが、ひとたび発症すると命に関わる感染症であることから予防が重要である。特に寮や合宿所での共同生活は感染リスクが高まるので、共同生活が始まる前に接種をしておくと安心だ。
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