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かんがえる子ども

14面記事

書評

安野 光雅 著
学びとは、絵本作家が語る

 著者は高名な絵本作家。ほとんどの学校図書館には氏の絵本が常備され、子どもたちの人気も高い。その著者が、かつて小学校の教員をしていたという。評者は寡聞にして知らなかったが、知って親近感を覚えた。
 本書は、氏の経験と体験を踏まえたエッセー集である。現今の子どもたちの置かれている状況や情報化社会への著者の危機感が、執筆の背景にあるように思える。それだけに、学校現場の教員にも「かんがえる」ことが求められる。大きなテーマが三つある。
 最初のテーマは子どもについて。ここでは、子どもの立場になって見ていく大切さが語られる。大人目線で忖度(?)することは必ずしもプラスにならないのだ。
 二つ目は学びについてである。「考える」ことこそ学びであり、知識の量が求められるものではない。一例として、クイズとパズルの違いが提示される。読者は分かるだろうか。
 三つ目は自分で考えるためのヒントとして、著者は最近の情報化社会に警鐘を鳴らす。自分で判断すること、本物に触れること、自分の五感で感じること等、自分を取り戻す術について見解を示してくれる。
 本書は単なるエッセー集にとどまらない。氏の作品である絵本から取った挿絵が挟まっている。これが、読者に「かんがえさせる」のだ。絵本作家としての面目躍如である。
(1080円 福音館書店)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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