赤坂　真二　著
マネジメント能力の大切さ

　本書の「はじめに」の中で学力向上の秘訣が学級経営であることがずばり書かれている。にもかかわらず、現在の大学の教員養成課程には学級経営という専門科目がないことが明かされる。いや、これは評者が学生の頃もそうであった。学級経営は学校現場に出てから体験的に学べばいいという歴史があったからだ。恐らく現在の教員養成課程では、学級経営に関して最も研究を深めている著者の次の言葉が、読者にストレートに響くはずである。「よい学級も、よい授業も、メンバー相互の良好な関係からもたらされる」。ところが、これがうまくいかず、さまざまな問題が、学級、学校内で起きてしまう。何が足りないのか。著者の言葉を借りれば次のようになる。「子どもたちを組織したり、モチベーションを育てたりするなどのマネジメントが弱い」。このマネジメント能力を高めなければ、これまで取り組み、校内研修の中核を担ってきた授業研究の成果も、実は上がらないのである。今はこのマネジメント能力の向上に、校内研修の重点を置きたい。
　このことに早く学校が気付き、校内研修の改革を進めてほしい。「子どもが変わった」などという甘い言葉に逃げてはならない。教師の学級経営のマネジメント能力の向上こそ、これからの学校教育のキーワードになっていると本書は示唆する。本書を手元に置き、学級経営の充実を図りたい。
（２１６０円　明治図書出版）
（庭野　三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員）