共通テスト 31年度初頭「実施大綱」策定へ前進
19面記事大学入試改革 (7)
4技能評価
35年度まで「認定試験」と併用
平成32年度に実施(33年度入学者選抜)する大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の実施方針が固まり、今後は今秋、来年度冬の2度のプレテストを経て、31年度初頭に向け「実施大綱」の策定作業に移る。「実施方針案」でA・B両案を示していた英語の4技能評価については、35年度まで共通テストの英語試験を実施、この間は各大学が共通テスト、大学入試センターが認定した4技能試験(認定試験)の成績を活用できることにすることで決着した。
記述式
まず国・数で
地歴・公民、理科 36年度以降の導入視野
大学入試センター試験に代わる新テストの名称は「大学入学共通テスト」となった。
実施開始年度は平成32年度で、33年度入学者選抜として実施する。
共通テストの出題教科・科目は6教科30科目で、次期学習指導要領の実施を踏まえ、36年度以降は教科・科目の簡素化を含めた見直しを図るとした。
今回の入試改革の一つの目玉である記述式問題の導入は、「国語」と「数学I」「数学I・数学A」で出題する。
「国語」は文字数80〜120字程度の問題を含め3問程度とする、マークシート式問題と記述式問題は大問を分け出題。試験時間はマークシート方式と合わせて100分程度を想定した。
「数学」では3問程度とし、大問の中にマークシート式問題と記述式問題を混在させ出題。試験時間はマークシート式と合わせ70分程度を想定する。
また、こうした「国語」「数学」の記述式問題の導入状況を検証しつつ、36年度以降は地理歴史・公民分野、理科分野などでも導入する方向で検討する。次期学習指導要領では歴史総合、地理総合、公共が必履修科目となる大きな変更が控える。
また、英語の4技能評価については、民間事業者などが実施し、一定の評価が定着している資格・検定試験を活用するとし、大学入試センターが必要な水準、要件を満たしたものを「認定試験」と認め、その試験結果の他CEFR(外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ共通参照枠)の段階別成績を要請のあった大学に提供していく。
「認定・成績収集・提供の詳細なシステムの設計や参加要件は、本実施方針の公表後、更に高等学校・大学関係団体や資格・検定団体等との調整を進め、その後、センターが各資格・検定団体からの認定申請を受けて審査し、認定した資格・検定試験を公表する」運び。
「実施方針案」から大きな変更があったのは、英語の4技能評価の実施時期。
案段階では「平成32年度以降、共通テストの英語試験を実施しない。英語の入学者選抜に認定試験を活用する」(A案)と、「共通テストの英語試験については、制度の大幅な変更による受検者・高校・大学への影響を考慮し、平成35年度までは実施し、各大学の判断で共通テストと認定試験のいずれか、又は双方を選択利用することを可能とする」(B案)の2案を示していたが、早期導入に否定的な意見や、共通テストの英語試験を存続する要望などがあったため、B案を採用した。
「平成35年度までは実施し」の前に「認定試験の実施・活用状況等を検証しつつ」の文言を加えた。
同時に「各大学は、認定試験の活用や、個別試験により英語4技能を総合的に評価するよう努める」の一文も、書き加えた。
検定料の負担軽減を要望する意見も多く、「受検者の負担が極力増えないよう、大学受検者全体に対する抑制に加え、低所得者世帯の受検者等の検定料減免等の配慮を求める」と修正した。
受検期間・回数は「各大学に送付する試験結果は、高校3年生の4月〜12月の2回までとする」とした。
英語以外の外国語の試験の扱いは「平成35年度までは、英語と同様、共通テストにおいて実施する」と明記した。
共通テスト実施は1月中旬の2日間。マークシート式問題、記述式問題は同一日程で当該教科の試験時間内で実施。成績提供時期は、現行の1月末から2月初旬の設定から「1週間程度遅らせる方向で検討」とした。
共通テストそのものの検定料にも言及し、記述式問題導入に伴う費用負担も勘案しながら、低所得世帯に対する検定料の減免制度導入、認定試験に移行した大学の受験では共通テストの英語試験が不必要になる場合が生じた際の共通テストの検定料減額などを検討事項として例示した。
今後は、プレテストを試みながら、32年度からの共通テストの円滑な導入を目指す。
教育関係団体の意見
英語「資格・検定」対策中心の授業懸念
既卒者への経過措置など検討求める
高大接続改革については、大学入試改革へのさまざまな意見がある。前号(7月10日付)に続き、「高大接続改革の進捗状況について」(5月16日)に対する主な関係団体の意見を紹介する。
日本私立中学高等学校連合会は、英語の外部資格・検定試験の導入に関連して、その受験時期、回数について高校3年時の2回に制限していることに「現実的かつ合理的でないと思料する」と指摘した。
その理由は、海外帰国子女や外国人留学生の存在。「生徒が過去に同じ外部資格・検定試験で高いスコアを取得していれば、高校3年時の受検結果に代えて利用を可能にするとともに、既卒者についての外部資格・検定試験の取り扱いを明確にすべき」と主張した。
併せて、授業で利用できるICT環境の整備、受検時の地域格差を生じさせないために「在学する地域等に関わらず、公平に希望する外部資格・検定試験を受検できるよう、CBTの普及や公費による財政支援も含め、ICT環境の整備と支援策を講ずるべき」と要望した。
全国都道府県教育長協議会は英語の4技能評価に関しては、経費負担の軽減、均等な受検機会の確保、公平な評価の必要性を指摘するとともに、「民間資格・検定」対策中心の授業になりかねないなど高校3年生の教科指導への支障を懸念した。
記述式問題の導入では「特に国語においては受検者が正確に自己採点を行うことが困難であり、現状の出願方法のままでは、出願先の大学、学部、学科等の決定に支障を来す恐れがある」と述べている。
全国予備学校協議会は、特に「既卒者」の取り扱いを中心に要望した。例えば「既卒者が再チャレンジできる公平な入試制度の在り方」として「前年にあたる平成32年度入学試験において、受験生は次年度入試制度への対応の不安から極端な安全志向となり、本来進学したかった志望校にチャレンジしない受験生が多く発生しかねません」と、既卒者対応への配慮を求めた。具体的には、既卒者への経過措置の検討、経過措置の早急な公表、英語4技能試験について既卒者への受検免除、共通テストの英語試験の存続などを挙げた。