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共通テスト「実施方針案」教育関係団体受け止めさまざま

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大学入試改革 (6)

 「高大接続改革の進捗(しんちょく)について」(文科省、5月16日)を公表した後、関係者らとの意見交換を経て、「実施方針」などを公表する運びになっている。高大接続改革を担う関係団体は、6月中旬に公表した「実施方針案」などへの意見などをまとめているが、その受け止めはさまざま。全国高等学校長協会は大学入試改革での英語4技能を測る資格・検定試験導入に関連して、平成35年度まで共通テストの英語試験を実施する「B案」を支持する一方、「36年度以降も継続」を強く要望した。国立大学協会は「現時点で共通テストの英語試験の廃止の可否を判断することは拙速と言わざるを得ない」と、その「意見」の中で指摘する。立場の異なる各団体の考え方を整理してみると―。

英語
全高長「B案」支持、36年度以降も
国大協 試験廃止の可否判断は拙速
私大連「集団準拠型」で利用困難
私大協 多大学が使える制度設計を

 「A案」は「平成32年度以降、共通テストの英語試験を実施しない。英語の入学者選抜に認定試験を活用する」。大学入試センターが一定の基準を満たす英語4技能評価の民間の資格・検定試験を認定するもので、従来のセンター試験から英語がなくなるということを意味した。
 「B案」は「共通テストの英語試験については、制度の大幅な変更による受検者・高校・大学への影響を考慮し、平成35年度までは実施し、各大学の判断で共通テストと認定試験のいずれかを、又は双方を選択利用することを可能とする」。36年度以降について明確に言及していない。
 これに対して、全国高等学校長協会は「方向性については賛同する」としながら、「大きな懸念」を表明する。
 その主な内容は、民間の資格・検定は本来別の目的で作られたものであることや、資格・検定間の差異が大きいこと、認定に当たっての高校学習指導要領との整合性、受検に際して地方に負担が大きいことなどである。
 そのため「B案」の支持を打ち出すが「高校生の英語の能力を測る上で共通テストの役割は極めて大きいものがあるので、36年度以降も継続して実施することを強く要望する」とした。
 一方の大学側はどう受け止めたか。
 国立大学協会は「大学入試センターが認定する民間の資格・検定試験を活用すること自体には一定の合理性がある」としつつ「認定試験を『活用する』ことと、認定試験をもって共通テストの『代替とする』こととは、その実質に断絶がある」とみる。
 センター試験での英語試験の果たしてきた役割・実績の検証、認定試験での認定基準、学習指導要領との整合性、受験機会の公平性を担保する方法、種類の異なる認定試験の成績評価の在り方などを早急に検討し、見通しを示すべきと要望した。こうした情報がない中では「あまりにも不確定な事項が多く、現時点で共通テストの英語試験の廃止の可否を判断することは拙速と言わざるを得ない」とし「少なくとも共通テストにおける英語試験の存続については、平成33年度入学者選抜に導入される認定試験の実施・活用状況等を検証の上、その後しかるべき時期にあらためて判断すべき」と、その意見にはA案からもB案からも隔たりがあった。
 日本私立大学連盟は「共通テスト」の大枠について「特段の異論はない」としながら、「困難な状況を生じさせる問題が散見される」と指摘した。
 英語の4技能評価についても是非には言及せず、共通テスト実施時にもアラカルト利用のみで合否を判定する入試形態を取る大学が多い中では、国語、数学などを含め他科目は「集団準拠型試験として利用しやすいが、英語のみが集団準拠型試験として利用しにくい、段階数の少ない達成度評価となるという齟齬(そご)が生じる」と使い勝手に言及。「集団準拠型試験として利用するためには、さらに細かな多段階評価を導入するのが望ましい」と要望した。
 日本私立大学協会は個別入試での英語4技能評価などの扱いについては「私立大学が個別に定めるアドミッションポリシーに基づき自主的かつ自律的に判断すべき事柄」とし、共通テストに関しては「多くの私立大学の利用が可能となる制度設計がなされるべき」とするのにとどめた。

国語・数学
記述式問題
私大連 作問工夫し適度な得点分散必要
国大協 実現性・実効性ある提案評価

 今回の入試改革のポイントの一つである共通テストの国語、数学への記述式問題の実施に関しては、国立大学協会は「相当程度の実現性・実効性のある提案が行われたものと評価する」と肯定的に受け止めつつ、記述式試験結果をどう活用するか検討するために、より多くのモデル問題例と明確な採点基準、採点の質や公正性担保の具体的方法などを早急に検討、詳細な公表を求める。
 ただ、日本私立大学連盟のように共通テストを集団準拠型試験の一部として使用する場合、記述式問題導入によって難易度が高まった場合に「選抜性の高い大学を除く多くの私立大学では、『共通テスト』が、識別性が低いテストとなり、有効に活用できなくなる可能性が高い」と危惧する面も残る。
 同連盟では「適度な得点の分散が確保されるよう、作問を工夫していただきたい」と要望した。
 共通テストに記述式問題が導入され、採点時間の関係から、大学への成績提供が現行より1週間程度遅らせ、一般選抜は1月25日から3月25日に前倒しにすることを実施方針(案)は示した。

スケジュール
私大連 成績提供時期で実施不可能
国大協 8月末には基本事項を公表

 これに対して、日本私立大学連盟は、共通テストが利用できなくなる可能性がある、と指摘した。現状では、合格者の歩留まりを予測するなど入学定員管理の必要から、センター試験利用入試の成績を受け取った後、一般入試を行っている。
 これで実施方針(案)のように「一般選抜の始期・終期が早まり、『共通テスト』の成績提供が遅れるならば、私立大学の定員管理を著しく阻害し、入試日程を定めることが極めて困難」になるため「『共通テスト』の実施時期と一般選抜の開始時期の関係について、再度検討を行っていただきたい」としている。
 全国高等学校長協会が公表した意見では、特に、実施スケジュールへの言及はなかった。
 大学入試改革には、受験者らへの予告・公表が必須事項になる。
 特に国立大学協会は「平成32年度以降の国立大学の入学者選抜制度―国立大学協会の基本方針―」を策定して、国立大学が基本理念を共有する。
 33年度入学者選抜を実施するための「入学者選抜方法等の予告・公表」は30年度に行う。その基になる「国立大学協会の基本方針」は今年の10月ごろには「策定しなければならない」。その策定のためには「遅くとも夏頃(8月末)」には必要な基本的事項の公表が不可欠としている。

個別大学選抜
方向性には賛同、さらなる検討を

 個別大学選抜について、これまでの「AO入試」を「総合型選抜」(仮称)、「推薦入試」を「学校推薦型選抜」(仮称)、「一般入試」を「一般選抜」(仮称)などと提案した。
 国立大学協会は「基本的な方向性には賛同」とし、「一般選抜」については「調査書等の活用の普及拡大については、調査書等の電子化や活用システムの構築などが不可欠であり、それらが早期に検討・実施されることを求める」。
 日本私立大学連盟は、「学校推薦型選抜」(推薦入試)は「高校長の推薦を尊重して学力担保を行ってきた」とし、「総合型選抜」(AO入試)と「同様な試験を課すとすれば、推薦の意味が問われる」ため「さらに検討を行っていただきたい」と注文を付けた。
 私立大学の自主性・自律性を主張する日本私立大学協会は「制度設計にあたっては、私立大学の入試実態を十分に踏まえた慎重な検討と、その運用における弾力的取り扱い」を求めた。
 全国高等学校長協会は個別大学選抜の「方向性には賛同」を表明。ただ「各大学がこの趣旨に沿って実施するよう遵守規定の制定等を含めた、指導の徹底をお願いしたい」と、大学が足並みをそろえることを求めている。

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