日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

新ルールで「実施要項」見直し

10面記事

pick-up

大学入試改革 (5)

 高大接続システム改革会議の最終報告(平成28年3月)が「『AO入試』『推薦入試』『一般入試』の在り方の見直しなどを通じた新たなルールづくり」を提言し、文科省が29年度初頭を目途に示すとしていた「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」(案)も「高大接続改革の進捗状況について」(29年5月)の中で併せて公表された。これまでの「AO入試」を「総合型選抜」(仮称)、「推薦入試」を「学校推薦型選抜」(仮称)へと名称変更するとともに、より多面的・総合的な評価の観点から改善を図った。

AO入試→総合型選抜 推薦入試→学校推薦型選抜
各大学の検査か「共通テスト」必須化
一般入試→一般選抜
記述式問題を充実

 大きな変更点は、これまでの「一般入試」を「一般選抜」(仮称)、「AO入試」を「総合型選抜」(仮称)、「推薦入試」を「学校推薦型選抜」(仮称)とする名称と、各区分の内容を見直したこと。
 それぞれの区分の改善策を示すが、一部で実施されている学力を問わないAO入試、推薦入試は大きく見直した内容や実施時期などを提案した。
 AO入試(総合型選抜)については、実施要項上の「『知識・技能の修得状況に過度に重点をおいた選抜とせず』との記載を削除」。調査書などの出願書類に加えて「各大学が実施する評価方法等又は『大学入学共通テスト(仮称)』のうち、少なくともいずれか一つの活用を必須化する」と提案した。「評価方法等」には小論文やプレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績などを例示した。併せて「本人の記載する資料(活動報告書、大学入学希望理由書、学修計画書等)を積極的に活用」することも挙げた。
 実施時期は、出願を現行の8月から「9月以降」とし、合格発表時期を「11月以降」としている。こうした改善策を前提に「募集人員には制限を設けない」。
 同様に、推薦入試(学校推薦型選抜)についても、実施要項上の「『原則として学力検査を免除し』との記載を削除」。調査書、推薦書などの他、「各大学が実施する評価方法等又は『大学入学共通テスト(仮称)』のうち、少なくともいずれか一つの活用を必須化する」と打ち出した。また、学校長からの推薦書には「本人の学習歴や活動歴を踏まえた『知識・技能』『思考力・判断力・表現力』『主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度』に関する評価を記載すること、及び大学が選抜に当たりこれらを活用することを必須化する」。
 こちらの出願時期は現行通り「11月以降」とするが、合格発表時期は現行の11月から「12月以降」とした。募集人員は現行同様、「入学定員の5割を超えない範囲」。
 一般入試(一般選抜)に関しては「調査書や志願者本人が記載する資料等の積極的な活用を促す」「『大学入学共通テスト(仮称)』の積極的な活用」や、個別入試での「教科・科目に係るテストの出題科目の見直し・充実」を求める。
 「特に」としながら、高校学習指導要領での言語活動の充実を踏まえ、「記述式問題の導入・充実」に取り組むことを盛り込んだ。
 さらに、英語試験の実施に際しては「4技能を総合的に評価」「資格・検定試験を積極的に活用」を求める。
 これら「一般選抜」の改善策は「総合型選抜・学校推薦型選抜においても推奨」とした。
 この他、「入学前教育の充実」にも言及。12月以前に入学手続きをとった者に対して「積極的に講ずる」という文言を実施要項に盛り込む。
 「学力の3要素」を多面的・総合的に評価するため、「調査書の見直し」「推薦書の見直し」などを図る。
 例えば、調査書にある「指導上参考となる諸事項」欄を拡充。(1)各教科・科目及び総合的な学習の時間における特徴等(2)行動の特徴、特技等(3)部活動、ボランティア活動、留学・海外経験等(4)資格取得・検定等(5)表彰・顕彰等の記録(6)その他―を掲示。
 「実施要項の『調査書記入上の注意事項等について』」は、部活動、ボランティア活動などでは、その具体的な取り組み内容や期間など、資格取得・検定では専門高校の校長会、民間事業者が実施する資格・検定内容、取得スコア、取得時期など、表彰・顕彰等の記録では各種大会、コンクールなどの内容や時期、国際バカロレアなどの成績、科学オリンピックなどの参加歴、成績などを具体的に示している。

新たなルールの方向性(案) (実施時期)

「学力の3要素」測る入試へ
多面的な評価に移行

 「『AO入試』『推薦入試』『一般入試』の在り方の見直しなどを通じた新たなルールづくり」はなぜ求められたのか―。
 高大接続システム改革会議最終報告は、個別の大学入学者選抜で実施されている一部のAO入試、推薦入試について「いわゆる『学力不問』と揶揄されるような状況も生じており、入学後の大学教育に支障を来すことが問題となっている」「本来の趣旨・目的に沿ったものとなっていない」などと、「入学者選抜で学力の評価が十分に行われていない大学における入学者選抜の改善等」を求めた。
 AO入試、推薦入試それぞれの「本来の趣旨・目的」を最終報告はこう述べる。
 「AO入試は、入学希望者の意志で出願できる公募制となっており、詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組み合わせることによって、入学希望者の能力・適性や学習に対する意欲、目的意識等を総合的に判定する入試方法である。『大学入学者選抜実施要項』では、(1)各大学が実施する検査の成績、(2)大学入試センター試験の成績、(3)資格・検定試験の成績等、(4)高等学校の教科の評定平均値のいずれかを出願要件や合否判定に用いることを示している」
 「推薦入試は、出身高等学校長の推薦に基づき、調査書を主な資料として判定する入試方法である。『大学入学者選抜実施要項』では、高等学校の教科の評定平均値を出願要件(出願の目安)や合否判定に用いること、推薦書・調査書だけでは能力・適性等の判定が困難な場合には、上記AO入試の(1)〜(3)の措置の少なくとも一つを講ずることが望ましいことを示している」
 AO入試、推薦入試の実施状況を見れば、平成12年度入学者のうち、推薦入試による者が31・7%、AO入試による者が1・4%だったのに対し、27年度には推薦入試が34・7%、AO入試が8・8%へと伸びている。
 特に、私立大学では推薦入試が約4割、AO入試が約1割を占め、約半数を占めるまでになった。
 一部の「学力不問」入試の実施によって、高校側から見れば学習時間の少なさと相まって「高校生の基礎学力や学習意欲が大幅に低下していないか」という課題を抱えることになる。
 今回の高大接続システム改革では、今後のグローバル社会を生きる人材の育成として、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」、いわゆる「学力の3要素」を問うとともに、小論文やプレゼンテーション、口頭試問、実技など多面的・多角的評価を取り入れることへと、評価の軸足を移すことが目指されている。
 新たな評価軸を打ち出すことで、高校教育、大学教育を改革し、そのつなぎである大学入試を変革しようという狙いからも、「新たなルールづくり」が必要になっている。

平成27年度学力把握措置状況

pick-up

連載