高大接続改革の狙いなど高校教員ら理解深める
8面記事全国12会場で「教育改革先取り対応セミナー」
(株)ナガセ・本社主催
「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)の導入や、次期学習指導要領の審議が本格化している高校教育など、高大接続改革に焦点を当てた「教育改革先取り対応セミナー」((株)ナガセ・日本教育新聞社主催)が今夏、全国12会場で開催された。英語入試改革を扱ったセミナー開催からスタートして3年目。各地の高校教員が主に参加し、文科省関係者などから直接、改革の狙い、進捗(しんちょく)状況などを聞き「教育のこれからがよく分かった」と好評だった。「主体的・対話的で深い学び」につなげるアクティブ・ラーニングの視点から授業改善についても学ぶ機会となった。
文科省幹部らによる基調講演
「学力の3要素」育成重視
高校・大学・入学者選抜 改革を一体で
基調講演は文科省が進める「高大接続システム改革」をテーマに、義本博司・文科省大臣官房審議官(高等教育局担当)、浅田和伸・文科省大臣官房審議官(高大接続・初等中等教育局担当)、濱口太久未・文科省高等教育局主任大学改革官、前文科省大臣官房審議官(高大接続・初等中等教育局担当)の伯井美徳・大学入試センター理事・副所長が、今年3月に高大接続システム改革会議がまとめた「最終報告」を基にしながら、「高大接続改革」の理念と経緯、高校教育の改革、大学教育の改革、大学入学者選抜の改革の狙いなどを解説した。
「高大接続改革」については、高校教育改革、大学教育改革、両者をつなぐ大学入学者選抜を「一体的に改革するもの」と説明。その背景には、グローバル化の進展や人口減少に伴う生産年齢人口の減などに加えて、AI(人工知能)などの進展により仕事が自動化され、求められる能力が変化することなどを指摘した。
子供の現状では15歳の生徒らは世界トップレベルの学力にあるため、その学力を高校、大学でさらに伸ばす必要性を強調した。
その際、「知識・技能の確実な習得」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」の学力の3要素の育成を重視し、大学入学者選抜でもこれらの要素を多面的に評価することの必要性を述べた。
また、高校教育では次期学習指導要領の方向として「主体的・対話的で深い学び」の実現や、国語、地理歴史などで論理的思考力、探究力を重視した教科・科目の新設などが検討されていること、大学教育では大学の理念や社会の要請等を踏まえ、どのような力を身に付けた者に卒業を認定し、学位を授与するのかを定めた「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー)、体系的で組織的な教育活動を展開するための教育課程編成や教育内容・方法、学修成果の評価方法を明確化した「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)、これら二つの方針の目標・内容を踏まえた入学者に求める学力の明確化と具体的な入学者選抜方法を明示した「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の、いわゆる「三つの方針」を平成29年度に一貫性あるものとして策定・公表するよう省令改正した現状に触れた。
入学者選抜の改革では「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)などの検討課題について、今年4月に設置した検討・準備グループなどで引き続き検討しており、29年度初頭を目途に「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)などの実施方針を明らかにしていくなどの工程について説明した。
東京会場・基調講演
技術革新の低下 選択問題が招く
鈴木 寛 文部科学大臣補佐官
東京会場では、文科省内で高大接続改革を主導する鈴木寛・大臣補佐官が基調講演し、改革が求められる背景などを説明した。
冒頭、高校を中心に大きく見直す次の学習指導要領について言及した鈴木氏は国際調査から見る日本の生徒の自己肯定感の低さや学習への動機付けの課題を指摘し、「生徒をアクティブ・ラーナーにすることが目的だ」と話した。
また現代を、工業製品の大量生産や大量消費を基盤とした社会の終わりを迎える「卒近代」の転換期にあると指摘。今後は「1あるものを増やすのは人工知能の仕事で、ゼロから1を生み出すのが人間の仕事になる」と述べ、学校教育での問題解決学習の必要性を強調した。
教員の定数についても触れた。高校の指導方法を変えるのに伴い、これまで義務教育中心だった教員の指導体制の充実が今後の課題になると話した。
入試改革をめぐって同省の有識者会議では、「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)の導入と並び、各大学の個別入試改革を打ち出している。有識者会議の報告に先立ち、既に東京大学が推薦入試を取り入れたり、京都大学が今後全学部で特色入試(AO入試)を導入したりするなど、国内のトップ大学でも入試改革の動きが出始めている。
ただ、鈴木氏は「毎年50万人が受験するセンター試験を変えなければ、本当の意味で思考力を重視した入試にならない」と述べ、新テストを導入する必要性を訴えた。
新テストが求められる背景については独自の見解も披露した。日本のイノベーション力(技術革新)の低下が共通一時試験の導入以降に起きていると分析。誤答の中から一つの正しい選択肢を選ぶ試験への対策が、影響しているという見方を示した。
記述式問題の導入をめぐっては、実施時期によっては高校教育へのしわ寄せが懸念されており、有識者会議の報告では明記されなかった。「1月3週にセンター試験を実施し、ここに記述式を入れるとどうなるか」など日程検討の選択肢にも触れた。
横浜会場・基調講演
思考力測る記述式が鍵に
安西 祐一郎 日本学術振興会理事長
横浜会場では、文科省の高大接続改革チームのリーダーを務める安西祐一郎・日本学術振興会理事長が「高大接続をどう進めるか」で基調講演した。
「時代の転換期に当たって新しい学びへの転換が求められている」と述べて紹介したのは経済産業省がまとめた2015年度と30年度の就業構造の比較だ。
現状放置のままでは国内の従業者数は軒並み減少するが、変革を起こせばマーケティングや研究開発、高度な接客業や営業販売など一部の業種が増加すると試算している。安西氏は、単純な生産業では今後さらに活用が広まるAI(人工知能)に職を奪われると指摘し、「自分がわくわくすることを仕事にして他者に貢献する力がこれから必要な人材スキル」と強調した。
高大接続改革では知識・技術の習得と、それを活用するための思考力などを身に付け、主体的に人と協力できる力の育成を課題にしている。導入を決めている「高等学校基礎学力テスト」やセンター試験に替わる「大学入学希望者学力評価テスト」(共に仮称)は、こうした観点から設計が検討されてきた。
安西氏は大学入試の新テストについて、今後、プレテストを行うことや、実施教科をセンター試験より絞りたい考えを示した。英語については官民協働で4技能(聞く、話す、読む、書く)テストを開発・実施したいという意向も示した。
一方、新テストをめぐっては技術面や実施時期などの課題を指摘する声もある。関係者間の調整が難航しているとみられ、試験方法や具体的な出題の中身はいまだ流動的だ。
これに対して安西氏は「入試改革の一番のポイントは思考力などを測るための記述式の導入だ」として、改革の本筋に目を向けるよう求めた。現在のマークシート式については「与えられた選択肢のどれか一つが正解だと分かっていることなど現実の社会ではあり得ない」と述べ、記述式の必要性を強調した。
また、新テストの導入と並んで改革の柱となっている大学の個別入試や大学教育の改善についても触れ、改革を促す政府予算に期待した。
英語4技能で講演・分科会
ネットの素材を生かして
安河内 哲也 東進英語科講師
東進ハイスクールの人気講師・安河内哲也氏は、全会場で講演と分科会に登壇し、英語の4技能指導の方法を話した。日頃、授業で使用しているスライドを惜しげもなく披露しながら、生徒が活動的になる授業づくりのヒントを語った。
英英辞典を使った単語当てゲームや効果音付きのミニクイズ。そうした活動を取り入れ、普段から授業を10分程度のモジュールで構成しているという安河内氏。授業がいつも講義型になることについて「生徒のレベルよりも難しいテキストを使っているから説明が必要になる。難しいなら別の教科書を使うか、一部だけにすれば、終わった残りの時間を活動に回せる」とアドバイスした。
また、授業には、短時間で終わるクイズやミニゲームを積極的に取り入れるよう勧め、素材をインターネットから集められることなどを紹介。「動画で、海外で活躍する日本人が英語を話している姿を見れば、これでも通じるんだと自信がつくはず。特に野球の川崎宗則選手はお勧めです」と話した。
東京大学・特別講演
初の推薦結果、女性比率に変化
南風原 朝和 東京大学理事・副学長
東京大学の南風原朝和・副学長は、同大学が実施した推薦入試の状況を報告するとともに、国の入試改革プランについての見解を述べた。
一般入試の後期日程を廃止して導入した「推薦入試」の定員は100人。推薦要件に数学など各種オリンピックでの顕著な成績などを挙げたため「『一般入試でも受かるのでは』と指摘されたが、あくまでも例示」と話した。推薦入試入学後、学部まで決まっている点は画期的とし、学部によっては早めに大学院の科目にチャレンジできるとメリットを指摘した。結果的に173人が応募し、77人が合格した。東京・関東圏の受験者が減って、女子比率が4割近くになるなど変化もあった。
また、今の高校2年生から、医学部医学科に進める理科三類では面接を再導入する。面接で「なぜ医学科なのか」を問いたいという。
国の入試改革プランについては、個別の大学入試の改革状況との関連を見ていく必要性や、多面的総合的に評価する「学力の3要素」以外に必要な学力の要素について言及した。
講演「アクティブ・ラーニング」
問題解決学習、教え合い…授業改善の重要性訴え
千葉会場では、東京大学の山内祐平教授が、アクティブ・ラーニング(以下、AL)の取り入れ方を講演。生徒自身が課題を探し、解決を図る「問題設定型学習」を最終形と紹介し、学校や生徒の状況を見て、段階別に徐々に取り組みを深めていくことの重要性を語った。
京都大学の松下佳代教授(東京、名古屋会場)は「ディープ・アクティブラーニングとその評価」について講演した。
学習形態より学習の質や内容に焦点を当てた「ディープ・アクティブラーニング」の必要性を指摘し、考え方や評価方法を話した。
「今、なぜアクティブ・ラーニングなのか」をテーマに、大阪会場では石井英真・京都大学准教授が講演した。次期学習指導要領のポイントを押さえた後、ALと絡めながらカリキュラム・マネジメントの重要性などを解説。高大接続として新テストにも触れていた。
大阪大学の桃木至朗教授(福岡、横浜会場)は歴史教育を中心になぜ、どんな改革が必要かを講演。歴史認識などを説明、討論できない学生の現状から、一つの正解を見つける力より、いろいろな見方を、それぞれの論拠と共に発見・理解できる力が大事と話した。
公立はこだて未来大学の美馬のゆり教授は仙台会場で、「アクティブ・ラーニングと21世紀型スキル」と題して講演。平成14年から実施する同大学のプロジェクト学習について説明し、こうした課題解決学習を通して21世紀型スキルを育成する重要性を強調した。
北海道大学の山本堅一特任准教授(札幌会場)は、主に大学教員向けの研修で話しているAL型授業の手法を紹介。教え合いや反転学習などの例を紹介した上で、「授業外でできることは授業の外で、授業中にしかできないことを授業でするべき」と強調した。
神戸会場では、京都大学の溝上慎一教授が、「高校1・2年生で将来を見通せない生徒は大学でも成長しない」という追跡調査を基に、高校での授業改善の重要性を主張。海外の授業モデルから、講義とALを合わせた「アクティブ・ラーニング型授業」について説明した。
早稲田大学の田中博之教授(広島、金沢会場)は「不断の授業改善が重要なポイント」とし、「生徒の教科等横断的な資質・能力を育てるアクティブ・ラーニングのあり方」を講演。フィンランドの授業ビデオを使い「活用レベル」の指導方法を解説した。
分科会「大学教育・個別入試改革」
推薦・AO入試拡大へ
各大学 グローバル教育も推進
千葉会場では千葉大学の佐藤智司副学長が個別入試改革、渡邉誠理事・副学長が大学の進める教育改革について、それぞれ講演。グローバルプログラム開発や全員留学の国際教養学部設置など改革状況に触れた。
一橋大学の沼上幹理事・副学長(東京会場)は大学強化プランと教育改革・入試改革について講演し、長期海外留学支援などグローバル教育の充実、平成30年度入試から推薦入試を全学部に導入することなどを話した。
名古屋大学の木俣元一副総長(名古屋会場)は参加者からの質問に応じる中で、推薦・AO(アドミッションオフィス)入試の拡大について検討していることを明らかにした。「学力を多面的に評価するようになっている。推薦以外も考えられる。いろいろな案を検討している」と話した。
29年度入試から推薦・AO入試「世界適塾入試」を全学部で導入する大阪大学。大阪会場では小林傳司・同大理事・副学長が現在の準備状況を語り、7月下旬から本格的な検討に入ったことなどを明らかにした。また昨年度、初めて実施した高大接続型「特色入試」を紹介した木南敦・京都大学理事補(教育担当理事)・高大接続入試センター副センター長。導入に至るまでの背景に加え、求める学生像などに触れながら解説した。
九州大学の丸野俊一理事・副学長(福岡会場)は30年4月開設の「文理融合型」新学部構想について触れるとともに、大学適応力重視入試や国際経験・英語力重視型入試など入試改革構想に言及した。
東北大学高度教養教育・学生支援機構の石井光夫教授(仙台会場)は、同大学の入試改革について解説。AO入試導入の経緯と狙い、実施概要と特徴について説明し、AO入試入学者が高評価を得ていることなどを話した。
埼玉大学の齊藤享治理事・副学長(大宮会場)は研究力強化や質の高い人材育成を目指し、急ピッチで取り組む改革状況などについて講演。例えば、小学校教員養成にシフトした教育学部での入試改革などを語った。
北海道大学の喜多村昇総長補佐(札幌会場)は、AO入試のてこ入れとして検討している次世代型入試の構想に言及し、将来的にはウェブ試験も視野に入れていることも明かした。
神戸大学の藤井勝理事・副学長(神戸会場)は、今後、学力評価テストの活用については、テストの概要が分かり次第検討するとし、それまではAO・推薦入試などを拡大する方向性を示した。
広島大学の宮谷真人理事・副学長(広島会場)は「世界トップ100」を目標に掲げ、スーパーグローバル大学創生支援事業、研究大学強化促進事業の二大プロジェクトにより実現を図ることなどについて話した。
金沢大学の柴田正良理事・副学長(金沢会場)は独自のグローバル人材育成スタンダード策定、カリキュラム改革の状況に触れた。今後、特異な才能を備えた多様な学生受け入れの仕組みなど入試改革にも言及した。
東京工業大学の水本哲弥副学長(横浜会場)は今年4月、日本で初めて学部と大学院を統一した「学院」による制度改革を中心に講演。入学時から博士課程の教育カリキュラムが見通せる点などの良さに触れた。
分科会「高校AL実践例」
理科 家庭の現象題材に興味喚起
数学 応用段階でグループワーク
現代社会 授業冒頭、3分間スピーチ
千葉、横浜両会場には、開成高校の小松寛教諭(化学)が登壇。「金属イオンの分離」の単元では、一連の実験が、実は「海の水はなぜしょっぱいか」という科学的な問いの答えとなる仕掛けを施す。この解答を導くために、グループなどで生徒たちに話し合わせ、学んだ知識を生かす主体的で深い学びにつなげている。
理科系科目では、家庭のさまざまな現象を授業の課題として持ち込み、生徒たちの興味・関心を喚起する。こうした試みで、学習活動や授業内容に対する気持ちを前向きにすることがアクティブ・ラーニング(AL)の要だと語った。
東京都立国立高校の大野智久教諭(東京、広島会場)は、生物の実践例を基にAL型授業の「目的」と「方法」について考察。受講者同士でAL型授業についての情報共有を行う時間も設けた。AL型授業は「生徒と教員、周囲の状況の実態に応じて柔軟に、変更し続けることが重要」と指摘。授業デザインでは、目的・課題・発展課題から構成するプリントを用い、ミニ講義を入れながら生徒が活動。グループでの討論や確認テストなども入れ、「対話による学び」の効果などが見られたという。
名古屋会場では、広島県立祇園北高校の柞磨昭孝(たるまあきのり)校長が講演。同県内外で知られる「ICEモデル」という手法を紹介した。この手法では、「基礎的知識」(I=アイデア)の間の「つながり」(C=コネクション)を理解させ、知の「応用」(E=エクステンション)へと発展させていく。具体例の一つとして、古典小説を読み解く事例を紹介。生徒は現代の裁判員になったつもりで読み、文中で描かれる事実関係から登場人物の犯罪についての判決を下す。生徒に「ミッションを与える」という特徴を挙げた。
茨城県立竹園高校の中山幸昭教諭(福岡会場)は「コンセプトマップ」を活用した世界史の授業実践について報告した。「黄河文明・殷・西周」についての「コンセプトマップ」を用い、4人ずつ9班をつくり、教科書を音読後、マップ上の指定した空欄の語句補充を7分ほど考えさせ、その後に教員が解説。最後は「振り返りプリント」によって各自が授業の要点などを文章化する。深い学びにつながる一方、コンセプトマップ作成に時間がかかることや、復習をしないと知識の定着度に課題があるなどとした。
公文国際学園高等部の綿貫祥英教諭は仙台会場で、同校が取り組んでいる数学のAL型授業の実践を紹介した。ALを進めるためには、まず、自学自習をきちんと行うことが必要。その上で、数学を学ぶ目的意識を明確化して、小さな成功体験を積めるように授業を工夫した。そうした中で、数学を構造化した教材を作り、授業を実施。生徒に問題意識を持たせ、思考力(考える力)、表現力を育てている。三角関数を例に、具体的な内容を説明した。
世田谷学園高校の大石隆教諭(大宮、札幌会場)は「いきなりアクティブ・ラーニングではなく、やれるところからやろう。少しずつ導入するのが自然体」と語り、数学での「円周率」をお題にした実践例について話した。
「レベルアップしそうなタイミングでアクティブ・ラーニングが効く」と総合力、応用力を付ける際のALのススメを説く。例えば、「『円周率が3・05より』大きいことを証明せよ」などの問いをグループワークさせると、「12角形」で考える生徒が多く、そこから無限級数や微分・積分などを用いた方法などにつなげていくという。
神戸会場では、東大寺学園高校の布村浩二教諭が、数学でのALの実践を紹介した。同校は年間授業日数が少なく、遠方から通学する生徒が多いため下校時間も早い。布村教諭は「教員側もアクティブにならないとアクティブ・ラーニングはできない。授業の工夫に時間と労力をかける必要がある」と語る。しかし、残業を他教員に強要できないため、AL推進には校内のシステムづくりが必要と指摘した。
東京都立西高校公民科の篠田健一郎教諭(金沢会場)は同校でのAL実践例を発表した。その一つが、1年生「現代社会」での「3分間スピーチ」。授業冒頭、毎回、2人の生徒がレジュメを作成した上でスピーチし、他の生徒から質疑や評価表を受ける。また、授業外では金曜日早朝に「読書会」を実施。要約や分からない点などのレジュメを作成、自由討論。その他事例も紹介しつつ、篠田教諭は「座学でも生徒の頭の中がアクティブなら、アクティブ・ラーニング」などと話した。
講演「トビタテ! 留学JAPAN」
奨学金、研修など手厚く
官民共同で高校生支援
全12会場で、文科省などが進める官民共同の海外留学支援「トビタテ! 留学JAPAN」の高校生向けコースの制度説明があった。
テクノロジーの飛躍的な進化により、変化が激しく「正解のない時代」。求められるのは、主体的に物事を捉え解決する力や、クリエーティブな企画力、起業家精神、さまざまなことへの好奇心、挑戦意欲、慈しみの心などだ。
こうした力を育むために、生徒が自分のしてみたい留学を考えて応募し、充実した奨学金制度や、事前事後研修の提供、派遣留学生のコミュニティーなどで後押しするプログラム。語学学習だけでなくスポーツや芸術、ボランティアなど、インターンなども含め幅広く支援する。
人物評価ではなく、一人一人が違った内容で申請をしてくるが、この「自分をアピールする」ための準備の期間が非常に勉強になったという声も多い。「高校生が自分を売り込む場面はそうはない。やりたいことを相手に伝えて留学するというプロセスにも、教育的な効果があるのではないか」(担当者)
事前には、採用された生徒がお互いの留学計画を伝え合うグループワークなども行っている。計画をシェアしモチベーションを高め合って留学に備えている。
昨年度、初めて送り出した1期生のフォローアップ研修では「今後、勉強をする意味や目標が見つかった」など、モチベーションが高まったという声が上がったという。こうした「未来へのエンジンとコンパス」を見つけて帰ってきた生徒が多い。本年度は2058人から応募があり、511人が採用された。倍率は4倍程度。多くの生徒は7・8月の夏休み期間を利用した2〜4週間の短期留学だという。
来年度出発の第3期生の募集は本年10月ごろから開始する予定。