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こう変わる 高校の教科・科目構成 (5)

10面記事

高校

最終回
強まる「探究」色

 小・中学校とのつながりを強化するとともに、新しい時代の技術革新なども踏まえ、共通必履修科目として新設される「情報I」(仮称)や、現状では趣旨が十分には生かされていない総合的な学習の時間は、その名称の変更も視野に、より探究色を強めて位置付けの明確化を図る方向で検討が進む。選挙年齢が引き下げられたのに伴い、主体的な地域社会への参画の一層の充実を求め、家庭科は基礎と総合に再編し、必履修科目となることが議論されている。

情報I(仮称)
コンピュータで課題解決
プログラミングも扱う

 現行の学習指導要領では共通教科「情報」として「社会と情報」「情報の科学」の2科目から構成し、うち1科目を履修する。高校での「情報活用能力育成の中核」に位置付けてきたが、その課題に「情報の科学的な理解に関する指導が必ずしも十分ではない」点や、「情報やコンピュータに興味・関心を有する生徒の学習意欲に必ずしも応えられていない」点などが挙げられている。
 高度情報社会への進展などを考慮するとき、「プログラミングや情報セキュリティに関する教育の充実」、卒後の進路にかかわりなく、「情報の科学的な理解に裏打ちされた情報活用能力を育むことが一層重要になってきている」という。
 そのため、現行の科目構成を見直し、共通必履修科目として「情報I」を新設するとともに、発展的な内容を学ぶ選択科目として「情報II」(仮称)を設けることなどが検討されている。
 「情報I」および「情報II」では「コンピュータや情報システムの基本的な仕組みと活用に関する内容、コミュニケーションのための情報技術の活用に関する内容、データを活用するための情報技術の活用に関する内容で構成」。科目の導入段階では「情報化が進展する社会や情報社会と人間との関わりなどについて考えさせ」、それぞれの科目で「どのような情報技術や情報を扱う方法について学んでいくかを概観させ、学びへの意欲と見通しとを持たせるようにすることが適当」などと構想している。
 具体的には、「情報I」では「情報社会の問題解決」「コミュニケーションと情報デザイン」「コンピュータとプログラミング」「情報通信ネットワークとデータの利用」の4項目で構成し、プログラミングおよびモデル化とシミュレーション、ネットワークと関連して情報セキュリティ、データベースの基礎、情報コンテンツの制作・発信の基礎となる情報デザインなどを扱うとしている。
 また、「情報II」は「情報社会の進展と情報技術」「コミュニケーションと情報コンテンツ」「情報とデータサイエンス」「情報システムとプログラミング」の4項目で構成し、情報システム、ビッグデータなどを扱い、情報技術の発展と経緯、情報社会の進展との関わり、AI(人工知能)やコンピュータとものとがつながるIoTなどの技術や将来の社会の関わりなどについても考えさせるとした。
 ただ、現状でも共通教科情報科の担当教員の約3割が免許外教科担任(文科省調査)。こうした現状の解消やプログラミング、モデル化とシミュレーション、統計的手法の活用などを含めて研修の充実を求めている。
 特に、プログラミング教育については、第4次産業革命を見据え、小学校段階からも次期学習指導要領に入ってくることから、高校段階ではコンピュータの働きを科学的に理解するとともに、実際の問題解決にコンピュータを活用できるようにすること(「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について」〔議論の取りまとめ〕平成28年6月)などが期待されている。

情報科新科目のイメージ(案)
情報科新科目のイメージ(案)

「総合」
実社会から課題見いだし自己のキャリア形成へ

 進路指導や学校行事などのような活動に取り組む学校もあることなどから、高校では「ふさわしい実践が十分に展開されているとは言えない状況にある」と指摘されている総合的な学習の時間。
 今後は、小・中学校での総合的な学習の時間の成果を生かし「より探究的な活動を重視する視点から、位置づけを明確化し直すことが必要」と考えられ、内容的には「各教科等の特質に応じて育まれる見方・考え方を総合的・統合的に活用することに加えて、自己の在り方生き方に照らし、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら見方・考え方を組み合わせて統合させ、活用しながら、自ら問いを見出し探究することのできる力を育成する」などと、その方向性が検討されている。
 高校段階では、さまざまな形で「探究」色が強まっている。この点について、生活・総合的な学習ワーキンググループのまとめでは「総合的な学習の時間と課題研究科目、『理数探究(仮称)』」との「違い」として触れている。
 すなわち「専門性を活かした職業につながる専門教科や、大学における学問分野につながっていく『理数探究(仮称)』の場合には、専門分野に向かっていく自己のキャリア形成と関連づけながら見方・考え方を統合させ、活用していくことを前提とした探究を行うのに対し、総合的な学習の時間では、一定の進路を前提とせずに、実社会や実生活から自ら見出した課題を探究していくことを通して自己のキャリア形成の方向性を見いだすことにつなげていくという違いがある」。
 高校の総合的な学習の時間については、名称についても見直すべきとし、「総合的な探究の時間」あるいは「探究の時間」などが例示されていたが、6月27日の高校部会の議論の取りまとめによって、名称については「総合的な探究の時間」(仮称)に改めると書き込まれることになった。

家庭科
「基礎」「総合」へ必修科目再編

 自立した生活者として必要な生活を科学的に理解すること、生活課題を解決する能力の育成に加え、選挙年齢の引き下げに伴い「共に支え合う社会の実現に向けて、家庭や地域の生活を創造しようとする態度や主体的に地域社会と関わり、参画しようとする態度を育成することが一層求められる」高校家庭科。
 現行では「家庭基礎」「家庭総合」「生活デザイン」の3科目から必履修科目として1科目を選択できたが、次期学習指導要領では必履修科目として「家庭基礎」(仮称、2単位)、「家庭総合」(仮称、4単位)として再構成することが検討されてきた。
 これらの必履修科目では、少子高齢化、衣食住の生活、持続可能な社会の構築―に関する内容の改善や、生活の科学的な理解の一層の重視などを今後の方向として議論されてきた。
 具体的には「家庭基礎」では子どもを産み育てることや子どもと関わる力を身に付けること▽必要な高齢者の生活支援技術の基礎内容の充実▽自立した生活者として必要な衣食住の生活や生活での経済の計画などの実践力定着▽生涯の生活設計、消費環境に配慮したライフスタイル確立などに伴う意思決定能力―の育成など。
 「家庭総合」では乳児との触れ合いやコミュニケーションに関わる内容の充実▽高齢者理解、生活支援技術の充実▽健康、安全に考慮した衣食住の生活を実践する力▽生活経済、生涯の生活設計、消費環境に配慮したライフスタイル確立するための意思決定能力▽生活を総合的にマネジメントし、グローバル化に対応した日本の生活文化を継承・創造する―などの内容改善を図るなどとした。
 いずれもホームプロジェクトなど問題解決的な学習を重視する。

高等学校の教科・科目構成について(案)

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