こう変わる 高校の教科・科目構成 (1)
10面記事国語
次期学習指導要領では高校の学習内容、指導方法も大きく変わる。中央教育審議会初等中等教育分科会の各協議グループでの審議も大詰めを迎え、教科・科目構成の大枠も明らかになってきた。思考力・判断力・表現力を育成する授業方法の導入や、18歳主権者教育の必要性などが、改訂、変更の背景にはある。国語科の内容がどう変わるか―。
必履修に「現代の国語」「言語文化」(仮称)
現状に八つの課題
少ないグループ協議、まとめ
大きな変化が求められそうな教科の一つは、国語科である。
審議の過程では、高校での国語教育の現状を踏まえて、八つの課題が指摘されている。
授業や学習指導で心掛けていることを聞くと、「教科書にあることを丁寧に教える授業」が52・8%と半数を超える一方、「児童生徒がグループで話し合い、考えなどまとめる授業」7・3%、「児童生徒が、自分で課題を選択し、調べたことや考えたことに基づいて、レポートを書いたり発表したりする授業」9・3%と低い数値が出た(「学習指導と学習評価に対する意識調査報告書」(財)日本システム開発研究所・平成21年度文科省委託)。
こうした実態から「教科書教材等への依存度が高く、主体的な言語活動が軽視され、依然として講義調の伝達型授業が行われる傾向」や「話し合いや論述など『話すこと・聞くこと』『書くこと』における学習が低調」などを課題に指摘した。
また、国立教育政策研究所の「特定の課題に関する調査(論理的な思考)調査結果」(25年3月)から、国語に関連の深い調査問題の正答傾向を分析したところ、文章の記述(国語辞典の記述)を基に、辞典の特徴を生徒の約7割が捉えていたのに対して、「文章の内容を評価し、目的に応じて適切に活用することができる生徒は約4割」にとどまること。
生徒への質問紙調査で、論理的な思考力を一般的な表現形式で問う問題を、7割以上の生徒が「解いたことがない」とする一方、7割以上の生徒がこのような問題を解く力が社会で必要と答えていた。
こうした数値などを踏まえ「思考力・判断力・表現力の一部に課題」「メディアリテラシーや課題探究に関する言語活動等があまり行われていない」などの実態を課題視した。
この他、教育課程の編成・実施状況調査(25年度)から「進学者の多い普通科では、A科目の開設率が低く、言語文化に関する学習が不十分である可能性がある」、県段階の国語(古文)に関する高校抽出意識調査(23年)から「古典に対する興味・関心とともに、必要性を感じさせる指導にも課題」や「学習意欲を高めるために、『文法』『古語の意味』等に関する指導の改善の必要性」に言及した。
併せて、読書状況でも不読率がここ10年、減少どころか微増している点を挙げ「小・中学生に比して、高校生の読書活動は、ここ10年ほど改善が見られない」と指摘した。
新科目で課題解消
情報を解釈し、根拠に基づき議論
共通必履修科目(案)として明示しているのが「現代の国語」(仮称)と「言語文化」(仮称)である。
「現代の国語」は「実社会・実生活に生きて働く国語の能力を高める科目」。課題として挙がった「話し合いや論述など『話すこと・聞くこと』『書くこと』における学習が低調」「思考力・判断力・表現力の一部に課題」に対応して、「収集した情報を解釈し、根拠に基づいて論述したり議論したりする活動を通して、思考力・判断力・表現力等を育成する学習を重視」する。その際「『読むこと』にとどまらず、それを基に『書くこと』や『話すこと・聞くこと』に展開する指導を重視」する。
「メディアリテラシーや課題探究に関する言語活動等があまり行われていない」課題への対応では「情報活用能力の育成を重視」することなども検討してきた。
「言語文化」は「わが国の言語文化への理解・関心を深める科目」として構想してきた。
思考力・判断力・表現力の育成、開設科目に伴う言語文化の学習不足、古典への興味・関心や、学習する意欲喚起のための指導改善の必要性などに対応して、「古典や近代以降の文章を読むことを通してわが国の言語文化を理解し、社会や自分との関わりの中で生かす学習を重視」し、「『読むこと』『伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項』を中心とする指導」を求める。
また、伝統や文化の学習の改善の観点から、「言語文化」では、万葉集が詠まれた上代から近現代へとつながる言語文化への理解・関心を深める。
選択科目(案)では「論理国語」(仮称)、「文学国語」(仮称)、「国語表現」(仮称)、「古典探究」(仮称)などが示されている。
それぞれの科目では、「思考力・判断力・表現力の一部に課題」への対応にも重点が置かれている。
「論理国語」では「主として、創造的・論理的思考力の側面、考えの形成」に対応し、「文学国語」では「主として、感性・情緒の側面、考えの形成」に、「国語表現」では「主として、他者とのコミュニケーションの側面、考えの形成」に、それぞれ対応、焦点を当てた。「古典探究」でも「思考力・判断力・表現力の一部に課題」にも対応していく。
伝統や文化の学習の改善の観点からは「古典探究」が古文・漢文を主体的に読み深めることによって、伝統的な言語文化への理解・関心を深めていく。
高等学校国語科の改訂の方向性(素案)
各科目で読む図書示す
DVDなど音声・画像資料も
大きな課題の一つになっている「教科書教材等への依存度が高く、主体的な言語活動が軽視され、依然として講義調の伝達型授業が行われる傾向」への対応では、「各科目において、アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善を図る」といった改訂の方向性を示した。
読書活動に関しても、「各科目において、読書活動の充実を図る」。読書活動の展開については、各科目で読む図書を挙げている。各科目の性質を理解する上では、参考になるかもしれない。
「現代の国語」では説明文、評論文、小説、新聞、雑誌と間口が広い。CD、DVD、Web上の動画やテキストなどの音声・画像などを含む資料、行政機関や調査機関が発行する報告書、解説書などである。
「言語文化」では高校生向けの古典に関するシリーズ本、口語訳を含む古典に関する概説書、古典を素材にしたり翻案したりした近代の小説、歳時記などを挙げる。
選択科目(案)での「論理国語」では社会科学、人文科学、自然科学をテーマにした新書、概説を含む評論・論説本、一般の読者を対象とした専門書、「文学国語」は小説、物語、詩集、和歌集、句集や、文学作品に対する評論、詩歌に関する評論や解説本、文学を中心とした人文科学に関する新書などである。
「国語表現」は「現代の国語」の図書資料と近く、優れた表現としての音声・画像などの資料、企業などによる多様な広報文書、コミュニケーションや言語表現をテーマとした新書なども加えられている。「古典探究」では「言語文化」と重なる部分もある他、古典に関連した文庫本、新書など幅広い読書活動の展開も求められているようだ。