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細目の検討へ 大学入学希望者学力評価テスト

9面記事

高校

マークシート式の問題イメージ例(たたき台)示す

 高大接続システム改革会議「最終報告」を受け、平成29年度初頭に公表予定の「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)の「実施方針」などを検討する推進体制が整いつつある。文科省改革推進本部・高大接続改革チーム(リーダー=安西祐一郎・文科省顧問)の下に、四つの検討体制を組織した。その一つ、「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)検討・準備グループでは、対象教科・科目の出題内容と範囲、記述式・英語の実施方法と実施時期、成績表示、プレテストの実施内容、正式実施までのスケジュール、名称などについて、今後、幅広く検討していく。その一方で、思考力・判断力・表現力などを新テストとしてどう問うのか、高校関係者の関心も高まっている。「最終報告」をまとめる過程での議論などをあらためて整理すると―。

物理
必要なデータ自分で抽出
「思考・立式・計算」の解答形式

 審議の過程では、「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)で評価すべき能力と、マークシート式の問題イメージ例が「たたき台」として提示され、議論の対象となった。
 ただし、この問題イメージについては「マークシート式問題の出題に当たっての考え方の方針を示す趣旨で作成したものであり、大学入学者選抜の直接のモデル問題として検討したものではない」と注が付いた。
 具体的に示したのは、物理と世界史の問題イメージ例である。
 まず物理について見る。
 学習指導要領の内容を踏まえ、「重視すべき学習のプロセス」と「評価すべき具体的な能力」についての案を示した=上図参照。
 例えば、観察した自然事象の変化や特徴を捉える(重視すべき学習のプロセス)に対応しては、測定する力として、与えられた状況の中から、必要なデータや条件を抽出・収集する力(評価すべき具体的な能力)を挙げている。
 この他、抽出・収集したデータについて、それらの間の関係や傾向を見いだす力▽仮説を立てる力▽仮説を確かめるための方法を立案し実践する力▽検討結果を、グラフや図などを用いて分かりやすく表現する力―などを、実際の問題を通して測ることを企図したものだ。
 問題イメージは二つ提示されているが、問題イメージ<例1>を取り上げてみる。「理科の探究活動で、ヒロシさんとカズエさんは、太陽光のエネルギーについて、いろいろ実験してみることにした」という状況を設定して、問1〜問5までを立てた。
 その内容については「既存の問題とどのような観点で異なるのか」を設問に即して6点にわたり、示した。
 「問題全体」として「観察・実験の場面を通じた探究活動の文脈を設定する」や「他の教科・科目(本問では地学)や、日常生活や社会との関連を図ったテーマとする」といった観点がある。
 「問5」(問題イメージ例を参照)のように、「必要な情報やデータを自分で抽出・選択する必要がある」「どのようなグラフを描くかを自分で判断し、作成したグラフを外挿して正解を読み取る」ことが求められる。
 また、学習指導要領では言語活動、実験・観察、探究活動も重要視されているため、「ヒロシさん」と「カズエさん」の対話形式なども取り入れている。
 これまでの幾つかの選択肢から正解をマークする方式から、「思考して式を立て、計算した結果を解答に反映させる」新しい解答形式を導入。例えば、空欄に記号を指定して関係式を完成させるなどの工夫をしている。

物理において重視すべき学習のプロセスと評価すべき具体的な能力(案)

物理において重視すべき学習のプロセスと評価すべき具体的な能力(案)

問題イメージ(例1)

世界史
仮説を裏付ける論拠問う
正しい選択肢、複数ある設問も

 世界史でも、学習指導要領の内容を踏まえ、「重視すべき学習のプロセス」と「評価すべき具体的な能力」(案)を提示した=図参照。
 例えば、文章や年表、地図、図表等の資料から、歴史に関する情報を整理(重視すべき学習のプロセス)に対応しては、「歴史資料をよみとき、歴史に関する重要な情報を取り出す力」「資料(文字資料・絵画・写真・歴史地図)と歴史上の事象との関わりを推論する力」「資料等の根拠に基づいて、論理的に表現する力」を具体的に測っていく。
 「問題イメージ」としては、『経済統計で見る世界経済2000年史』(アンガス・マディソン著)に掲載する数値をグラフ化したものを示した。中身は、日本・中国・西欧・旧ソヴィエト連邦(旧ソ連)の地域について、16世紀までさかのぼり、経済規模(GDP)を長期的な傾向として把握できるよう図示した(問題イメージ参照)。問題では各地域がどの折れ線グラフを指すのかから、始めなければならないが、さらにグラフを前提に、四つの問いを立てている。
 「既存の問題とどのような観点で異なるのか」については、「異なる地域の長期変動に関する歴史資料をよみといたうえで、関連する出来事を多面的・多角的に考察する必要がある点」「正答選択肢が一つに限られず、複数存在する点」「歴史的事象に関する仮説を立てて話し合う場面において、その仮説を裏付ける論拠を問う点」を挙げた。
 設問によっては、選択肢を示し、A地域のGDPの変動について、正しいものを一つ、あるいは二つ選べ、でなく、「正しいものを全て選ぶ」出題を取り入れる。
 また、別の設問では、教員が「皆さんで仮説を立てて話し合ってみましょう」という発問に応えて、出した生徒の意見を基に仮説の根拠を問うような工夫をしている。
 これについては、仮説を立て、根拠を示しながら話し合うという方法が小学校の社会科では取られているため、高校での授業にも取り入れるきっかけとなることも狙っている。

世界史において重視すべき学習のプロセスと評価すべき具体的な能力(案)

高校

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