日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

多面的、総合的な選抜へ 求められる個別大学の入試改革

10面記事

高校

 高大接続改革の一つに位置付く「個別大学における入学者選抜改革」。これまでの「主として知識の暗記量・再生力を評価するテストの点数を柱とする入学者選抜方法」からの転換が求められている。高校側では、多面的・総合的評価による入学者選抜方法の推進を歓迎するが、その改革の精神が一部の大学の一部の選抜方法だけにとどまらず、大学全体へと波及することを望む声も強い。

文科省・高大接続システム改革会議「中間まとめ」(素案)
「知識・技能」「思考・判断・表現力」「主体的に学ぶ態度」
「学力の3要素」評価へ転換

 検討が進む文科省の高大接続システム改革会議「中間まとめ」(素案)では「今後、各大学の入学者選抜方法を、答申で提言された学力の3要素(『知識・技能』、『思考力・判断力・表現力』、『主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度』)を多面的・総合的に評価するものへと転換することが必要」と指摘。
 各大学は今後さらにアドミッション・ポリシーの明確化、特に学力の3要素について「どのような能力をどのレベルで求めるか」を明らかにしていくことが求められる。
 その際、評価方法として、素案では(1)「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)の結果(2)自らの考えに基づき論を立てて記述する形式の学力評価(3)調査書〔「高等学校基礎学力テスト」(仮称)の結果を含む〕(4)活動報告書(ボランティア・部活動・各種団体活動等)(5)各種大会や顕彰等の記録資格・検定試験の結果(6)推薦書等(7)エッセー、大学入学希望理由書、学修計画書(8)面接、ディベート、集団討論、プレゼンテーション(9)その他―などを例示した。
 「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)との関係では、同評価テストが「知識・技能のみならず思考力・判断力・表現力を評価することに鑑み、個別大学においては、同テストを入学者選抜の多角的評価の一環として用いることによって知識・技能、思考力・判断力・表現力の評価を行い、他方で個別の入学者選抜において『主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度』を多角的に評価する方法が考えられる」などと活用の方法を示した。

各地で加速する改革
九大 AOで学部超え人材発掘
阪大 全学部で「世界適塾入試」
東北大 英語で小論文・面接
東工大 大学院までの適性見る

 各大学でも入試改革に意欲的な動きがある。
 九州大学は、21世紀プログラムとして大学入試センター試験を課さないAO入試による特色ある入学者選抜を導入している。
 この教育プログラムは、特定の学部・学科に所属するのではなく、自分の「やりたいこと・学びたいこと」の実現に向けて、自分の意思で、自分のオーダーメードで、自分で学び創り上げていくプログラムと説明する。
 募集人員は26人。第1次選抜は調査書や志望理由書、活動歴報告書などの書類審査による総合評価、第2次選抜では講義に関するレポート、討論、小論文、面接それぞれを評価、第1次選抜結果と合わせて総合評価していく。
 大阪大学は、平成29年度から全学部で「世界適塾入試」を導入する予定だ。
 各学部の設定により、AO入試、推薦入試、国際科学オリンピックAO入試などを総称したのが「世界適塾入試」。出願要件などは学部・学科により異なることになるが、例えば、高校時代の課題研究の成果、国際バカロレア資格などによって、多面的・総合的に合否を決定していく。
 東北大学は平成29年度にグローバル入試を導入する予定。理学部では日本および諸外国におけるリーダーとして活躍する能力を養成することを目的にグローバル入試II期を導入する。6月に入試を実施して10月に入学する。選抜方法は出願書類の内容、大学入学資格試験等の成績、TOEFLスコア、小論文試験、面接試験の結果を総合して合格者を決定するもので、英語による試験だという。
 工学部は、グローバル入試II期と合わせてグローバル入試I期も導入する。入学時期は10月と同じだが、入試時期は2月。選抜方法は出願書類内容、大学入試センター試験成績、国際バカロレア資格、TOEFLスコア、小論文試験、面接試験の結果を総合して合格者を決定。I期は日本語による試験。
 平成28年度から東京工業大学は、日本の大学として初めて学部と大学院を統一し、「学院」を創設。6学院・19系へと再編する大改革を予定。合わせてカリキュラムの刷新、1年間を四つの期に分ける「クォーター制」を取り入れ、海外からの留学生も受け入れやすくなる。
 多様な選抜方法の一つ、平成28年度の推薦入試(第1類)では、10人を募集人員に、所属可能な学院として「理学院」(系は数学、物理学、化学、地球惑星科学)と「情報理工学院」(系は数理・計算科学)を設定。
 求める学生像には、自然界の仕組みについて深く知りたいという強い好奇心を持つ人、教わるだけでなく、自ら主体的に学ぶことができる人、自分の意見を持ち、他者と議論することができる人、十分な学力と表現力を持つ人などを挙げた。
 推薦要件は(1)課題研究で優れた成果を挙げ、とりまとめ発表した者(2)課外活動で理学において研究をして優れた成果を挙げ、とりまとめ発表したことを客観的に示す資料を提出できる者(3)数学、物理、化学、地学、情報のいずれかで国際科学オリンピックに日本代表として出場した者などを挙げている。
 学校推薦では(1)と(2)は合計2人まで、(3)は人数に制限がない。
 AO入試に関しても第2類から第7類まで、各類で求める学生像なども示し、積極的に多面化を図る。第1次選抜では大学入試センター試験を活用し、第2次選抜では類ごとに試験内容は異なるが、論理的思考力や記述力などを問う「筆記」、試問や口頭発表など「面接」を用意した。

東大「推薦入試」京大「特色入試」28年度導入
問題発見能力や俯瞰力など求め

 個別大学の入試改革の動向では、東京大学、京都大学の改革が注目を集めた。
 東京大学は平成28年度入試から「推薦入試」導入を予定する。募集人員は各学部で設定するものの、全10学部で募集する。定員は全体として100人程度。
 各高校からの推薦は男女各1人、計2人まで。複数学部への推薦はできない。各学部が定めた推薦要件に該当し、平成28年度大学入試センター試験を活用して、大学側が定めている教科・科目を全て受験することなどが必要。
 同センター試験については8割以上の得点が目安。書類審査、面接などの審査結果と同センター試験成績を総合的に評価して合否を決定する。
 例えば、法学部の推薦要件としては、当該高校で上位おおむね5%以内である学業成績、問題発見能力、課題設定能力を有すること、異なる文化的背景などを有する他者とのコミュニケーション能力に優れていることなどが示されている。
 出願書類は、調査書以外に、推薦要件に合致することを証明する書類の提出を求める。例えば、在学中に執筆した論文で志願者の問題発見能力・課題設定能力を証明するもの、表彰状や新聞記事などの社会に貢献する活動の内容を証明する資料、TOEFLや英検、IELTSなどの外国語に関する語学力の証明書などである。
 こうした提出書類の他、グループディスカッションや個別面接、大学入試センター試験の結果などを総合的に評価することを選抜方法として示している。
 高校側には、一般入試よりもハードルが高いと受け止める向きもある。

 また、京都大学は、「特色入試」として平成28年度から導入予定。こちらも全10学部で募集し、全体として100人程度を設定した。高校での幅広い学習に裏付けられた「総合力と学ぶ力」、「高い志」を評価し、個々の学部が定めたカリキュラムと教育コースを受けるにふさわしい「学力」「意欲」を備えた者を選抜するという。「高大接続型」の入学選抜の在り方を重視した。
 入試要項などを見ると、選考は2段階で、第1次選考は書類選考を通じて評価。第2次選考は学部が必要とする基礎学力、教育コースへの適合力を測定する能力測定考査、論文試験、面接試験などを組み合わせる。大学入試センター試験は基礎学力の把握のため利用する。
 同大はアドミッション・ポリシーの中で、「基礎的学力」について、高校の教育課程の教科・科目の修得により培われる分析力と俯瞰力、修得した内容を活用する力、外国語運用能力を含むコミュニケーションに関する力と掲示した。
 試験方式には、「学力型AO」「推薦」「後期日程」を学部・学科によって設定した。
 具体的には、「学力型AO」に位置付ける教育学部の選抜では、「評定平均値4・3以上」で大学入試センター試験の指定した教科・科目の受験者。第1次選考では調査書、学びの報告書、学びの設計書で選考。第2次選考は第1次選考合格者を対象に、「課題」として読解力、論理的・批判的思考力、問題解決能力などを評価。「口頭試問」で探究心、洞察力、コミュニケーション能力を評価。その際の配点は「課題」100点、「口頭試問」100点の計200点。最終選考として、第2次選考合格者から大学入試センター試験の得点合計が900点満点中80%以上の者を合格者とするとした。

高校

連載