大学入試に4技能の資格・検定活用
10面記事進む英語教育改革
グローバル社会への対応など、英語教育の改革は大学入試改革に先んじて進められている。高大接続改革では英語4技能の育成を重視しながら、高校から大学教育へとさらにその技能の伸長を目指す。英語4技能の資格・検定試験の活用や、アドミッション・ポリシーでの総合的評価の明示、今後導入を予定する「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)での取り扱いなども想定されている。
行動指針
出願要件、みなし満点
点数加算など明確化を
英語4技能の資格・検定試験の活用が加速している。「高大接続」改革では、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」の全てを十分に向上させることを目指す。
「大学入試」改革はその一つ。その際、英語に関しては、高校教育で育成した「『聞くこと』『話すこと』『読むこと』『書くこと』4技能を、大学における英語教育に引き継いで確実に伸ばしていくことができるよう、アドミッション・ポリシーにおいても4技能を総合的に評価することを示すこととし、『大学入学希望者学力評価テスト(仮称)』における英語の扱いも踏まえつつ、4技能を測定する資格・検定試験の更なる活用を促進すべきである」(中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」)と提言した。
こうした流れを受け、文科省は今年3月末に「英語力評価及び入学者選抜における資格・検定試験の活用促進について」と題する通知を発出した。各都道府県教委教育長、各政令指定都市教委教育長、各国公私立大学長などに宛てて、「英語力評価及び入学者選抜における資格・検定試験の活用促進に関する行動指針」を示したものだ。
「行動指針」自体は、平成26年11月に設置した「英語力評価及び入学者選抜における資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会」で合意したもの。通知によって「英語力評価及び入学者選抜における資格・検定試験の活用促進に関する行動指針」について、周知を図った。
「行動指針」では、「基本方針」として初等中等教育から高等教育を通じた、英語力の総合的な評価を実施することが重要とし、海外の主要大学では4技能を評価する資格・検定試験の一定レベルの英語力が求められるなど、「4技能の総合的な育成及び評価が行われることが急務」とその必要性を指摘。中学校から大学までの「各学校」と「各団体」における英語4技能の資格・検定試験活用を奨励するとした。
その上で、「資格・検定試験の促進活用において重視すべき事項(例)」を示した。
具体的には▽資格・検定試験の有効性を踏まえた活用▽英語力評価における資格・検定試験の妥当性▽多様な生徒学生への能力の適合性▽入学者選抜における妥当な活用方法▽生徒学生が受験しやすい環境への配慮▽適正・公正な試験実施体制▽国際的な通用性―などを挙げ、学校関係者、英語4技能資格・検定試験関係団体双方に奨励内容を明示した。
例えば「入学者選抜における妥当な活用方法」。学校関係者には「各学校において資格・検定試験の成果を活用する際は、具体的活用方法(例えば、入学者選抜において、当該資格・検定試験の結果を用いる場合の出願要件、みなし満点や点数加算などの得点の換算の方法等)を明確にする」ことを求めた。
一方、英語4技能資格・検定試験を提供するなど関係団体に対しては「各学校が資格・検定試験を活用するに当たり、生徒学生の英語力について、適切な評価が行われるよう、当該試験の結果の確認方法、試験間の比較に関する情報提供等に務める」としつつ、「生徒学生の英語力の現状及び学習の目的を踏まえた資格・検定試験の開発、活用の在り方、世界的な参照基準などの関係性に関する更なる検証が期待される」などとした。
教師の英語力・指導力
高校
英検準1級など55% 国の目標には届かず
文科省はこのほど、平成26年度英語教育実施状況(高校)をまとめた。
このうち、高校での英語担当教員の英語力の状況を見ると、英検準1級以上、TOEFL PBT550点以上、TOEFL CBT213点以上、TOEFL iBT80点以上、TOEIC730点以上のいずれかを取得している者の割合は55・4%いた。
第2期教育振興基本計画では、この割合の目標として75%を掲げていたが、目標には及んでいない。
だが、25年度調査では、同様の割合は52・7%。今回調査では、2・7ポイント上昇したことになる。
普通科などでの授業における英語担当教員の英語使用状況を見る。
現行の学習指導要領では授業を英語で行うなどとしているが、「発話をおおむね英語で行っている」と「発話の半分以上を英語で行っている」を合わせた割合は、「コミュニケーション英語基礎」32・7%、「コミュニケーション英語I」48・1%、「コミュニケーション英語II」46・7%、「英語表現I」41・3%、「英語表現II」37・9%となった。
英語担当教員に対する研修状況を見ると、実績値で25年度に国内研修を実施した教委の割合は59・7%で、前年度から3・0ポイント上昇した。
同様に、海外研修の実施は13・4%で、前年度から1・5ポイント増加していた。
高校教員の英語力の状況
中学校
授業の「発話」に英語 全学年で使用率上昇
中学校の英語担当教員の英語力の状況を見ると、英検準1級以上、TOEFL PBT550点以上、TOEFL CBT213点以上、TOEFL iBT80点以上、TOEIC730点以上のいずれかを取得している者の割合は28・8%。25年度から0・9ポイント上昇した。第2期教育振興基本計画では、中学校英語担当教員について、英検準1級以上などの達成目標を教員割合の50%として示している。
授業で「発話をおおむね英語で行っている」と「発話の半分以上を英語で行っている」を合わせた教員の割合を学年別に見ると、第1学年が50・5%、第2学年が49・3%、第3学年が46・9%。25年度との比較では第1学年が6・0ポイント、第2学年6・4ポイント、第3学年5・7ポイントと、それぞれ上昇していた。
英語担当教員に対する研修状況は、25年度に国内研修を実施した教委の割合は46・3%で、前年度から1・5ポイントの低下。海外研修の実施は9・0%で、前年度から3・0ポイント上昇していた。
また、25年度に小中連携に取り組む中学校区の割合が73・2%あった。前年度比で2・9ポイント上昇した。
中学教員の英語力の状況
小学校
英語免許状5%が所有
平成26年度小学校における英語教育実施状況調査によると、小学校の教員で授業を担当する者のうち、英語能力に関する外部試験の受験経験者は33・1%。外部試験の受験経験者で、英検準1級以上などを取得している教員は2・8%だった。
小学校教員の英語免許状所有者は、全体の5・3%。
生徒の英語力
高校
CAN―DOリスト 目標設定が大幅上昇
第2期教育振興基本計画で高校卒業段階では英検準2級程度以上を達成した高校生の割合について50%を目標に定めた。
高校3年に所属している生徒のうち、英検準2級以上を取得している生徒は11・1%。英検準2級以上を取得していないが、相当の英語力を有すると思われる生徒は20・9%いる。両者を合わせると31・9%。25年度の割合から0・9ポイント上昇していた。
また、「CAN―DOリスト」により学習到達目標を設定している学科が58・3%。25年度と比べても24・4ポイントと大幅に上昇した。
「CAN―DOリスト」により学習到達目標を設定している学科のうち、24・0%の学科が学習到達目標の達成状況を把握しており、25年度から8・2ポイント伸びた。
高校の「CAN―DOリスト」による学習到達目標の設定・公表・達成状況
中学校
英検3級以上の中3 国の目標下回る18%
第2期教育振興基本計画で中学校卒業段階では英検3級程度以上を達成した中学生の割合について50%を目標に定めた。
中学校3学年に所属する生徒のうち、英検3級以上を取得している生徒は18・4%。英検3級以上を取得していないが、相当の英語力を有すると思われる生徒は16・3%。両者を合わせると34・7%となり、25年度からは2・5ポイント上昇していた。
また、「CAN―DOリスト」により学習到達目標を設定している学校が31・2%。25年度と比べても13・8ポイント上昇した。
「CAN―DOリスト」により学習到達目標を設定している学校のうち、15・3%の学校が達成状況を把握しており、これは25年度から3・7ポイント伸びた。
中学校の「CAN―DOリスト」による学習到達目標の設定・公表・達成状況
今夏、共に創ろう「先取りセミナー」
「知りたいこと」募集
日本教育新聞社は今夏、(株)ナガセと共に「大学入試改革先取り対応セミナー」を開催する。昨年度の「英語教育改革先取り対応セミナー」に次いで第2弾となる。
特に、平成32年度実施を目指し、検討が進められている「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)などを主眼に置いたセミナーを開催するに当たって、高校現場を中心に大学入試改革、高大接続改革などで「知りたいこと」や、分科会テーマで取り上げてほしいことなどを大募集します。疑問と感じている点、こうしてほしい点、ご意見など、幅広くお寄せください。
皆さまの声を反映しながら、セミナーを共に創っていくことを目的にしています。
ご意見などは、ファクス(03・5510・7812)へ、「大学入試改革先取り対応セミナー」係と宛名を明記いただき、お送りください。