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変わる大学入試

15面記事

高校

知識に加え「思考力・判断力・表現力」問う

 大学入試改革を含め、高校教育、大学教育の在り方についての審議が進んでいる。具体的には、高大接続システム改革会議が3月上旬に初会合を開き、月1回程度のペースで会合を持つ。具体的な検討課題は▽高等学校基礎学力テスト(仮称)および大学入学希望者学力評価テスト(仮称)の在り方▽個別選抜(各大学が個別に行う入学者選抜をいう)の改革の推進方策▽多様な学習活動・学習成果の評価の在り方―など。今夏には中間的な取りまとめをする予定だ。なぜいま、どのような大学入試改革が構想されているのか―。

高校教育と一体的な改革に

 「知識の記憶力などの測定しやすい一部の能力や、選抜の一時点で有している能力の評価に留まっていたり、丁寧な評価よりも学生確保が優先されるなど、高等学校教育で培ってきた力や、これからの大学教育で学ぶために必要な力を評価するものになっていない。そうした背景には、年齢、性別、国籍、文化、障害の有無、地域の違い、家庭環境等の多様な背景を持つ高校生一人ひとりが、高等学校までに積み上げてきた多様な経験や能力を度外視し、18歳頃における一度限りの一斉受験という画一化された条件において、知識の再生を一点刻みで問う問題を用いた受験の点数による客観性の確保を過度に重視し、そうした点数のみに依拠した選抜を行うことが『公平』であるという、従来型の『公平性』の観念が社会に根付いていることがあると考えられる」
 入試改革を含む高大接続改革を求めた平成26年12月の中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」(以下、高大接続改革答申)での指摘だ。
 18歳人口が減る一方、受け入れる大学などの定員は変わらず、定員割れとなる大学も珍しくない。学生確保のために、一般入試ではなく、推薦入試やAO入試の、いわゆる非学力型選抜の割合が増加。33年ごろからは、さらに18歳人口の減少が予想されている。今後、定員割れの続く大学経営への影響や、学生確保と学力の担保が両立するかが懸念されている。グローバル時代に対応した人材育成が求められる一方で、大学で学ぶための学力が定着しておらず、リメディアル教育を取り入れる大学は後を絶たないといった学力低下の問題に加え、学生の学習時間の短さ、学習意欲の低下に対する危機感も強い。
 同様に、98%の進学率となっている高校でも多様さは増し、生徒たちの学習時間の少なさや、学習意欲の問題は、大学教育と同根の課題を抱える。
 「改革のための現実的問題として大きく立ちふさがるのが、大学入学者選抜の在り方」は共通した認識としてある。それを踏まえた上で、高大接続改革答申では、高大接続改革は大学入試改革「のみの改革ではない」とし、高校教育と大学教育を通じて知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性・協働性・多様性の全てを十分に向上させることを目指したものだという。
 その重要なファクターの一つが大学入学者選抜の改革であり、その内容については「現行の大学入試センター試験を廃止し、大学で学ぶための力のうち、特に、『思考力・判断力・表現力』を中心に評価する新テスト『大学入学希望者学力評価テスト(仮称)』を導入し、各大学の活用を推進する」と提案した。
 また、高校教育に関しても「学習指導要領を抜本的に見直し、育成すべき資質・能力の観点からその構造、目標や内容を見直すとともに、課題の発見と解決に向けた主体的・協働的な学習・指導方法であるアクティブ・ラーニングへの充実を図る」と提案。「教育の質の確保・向上を図り、生徒の学習改善に役立てるため、新テスト『高等学校基礎学力テスト(仮称)』を導入する」とした。
 その内容については、高大接続改革答申に詳しい=下表参照。「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」は例えば「『教科型』に加えて、現行の教科・科目の枠を越えた『思考力・判断力・表現力』を評価するため、『合教科・科目型』『総合型』の問題を組み合わせて出題」、また、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」は「出題内容については、高等学校で育成すべき『確かな学力』を踏まえ、『思考力・判断力・表現力』を評価する問題も含めるが、学力の基礎となる知識・技能の質と量を確保する観点から、特に、『知識・技能』の確実な習得を重視」などとした。

学力評価のための新たなテスト(仮称)
学力評価のための新たなテスト(仮称)

大学新テスト、32年度実施へ

 今年1月には、高大接続改革の答申を受け、文科省は「高大接続改革実行プラン」を策定した。文科省として今後取り組むべき重点施策とスケジュールを明示し、体系的かつ集中的な施策を図ることが目的。
 「高等学校基礎学力テスト(仮称)」と「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を「新テスト」と総称し、実施内容を明確にした。
 実施時期を明示し、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」は平成31年度から、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」は32年度からの導入を目指す。
 そこに至るまでの工程も併せて示されている=下図参照。
 実際には、「高大接続システム改革会議」が今年3月から審議に着手しており、今夏をめどに、中間取りまとめを公表する予定だ。
 対象となる教科・科目、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」での「教科型」「合教科・科目型」「総合型」などの具体的な枠組み、問題の蓄積方法、作問の方法、記述式問題の導入方法、CBT方式の導入方法、成績表示の具体的な在り方などについて検討し、結論を得るとしている。
 「新テスト」だけでなく、各大学の選抜改革も示す。
 具体的には、中教審の論議を経て、アドミッション・ポリシー(入学者受け入れの方針)、ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)、カリキュラム・ポリシー(教育課程の編成・実施の方針)の一体的な策定を義務付けるなどにより、各大学の取り組みを推進する。27年度中をめどに関係法令の改正、同様に、認証評価に関する省令について27年度中をめどに改正して、認証評価の評価項目に入学者選抜を明記する。
 大学入学者選抜実施要項も見直して、例えば、アドミッション・ポリシーに基づいた個別選抜の具体的な方法や選抜時の評価に活用する資料の種類の受験者への明示、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」や「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の活用方法などの明示―などについて、可能なものから28年度大学入学者選抜実施要項に段階的に反映していく。
 こうした各大学の個別選抜改革、法令改正や大学入学者選抜実施要項の見直しなど「新たなルール」にのっとった改革を推進するため、27年夏をめどに財政措置の具体策をまとめる。
 高校教育改革については、例えば、主体的・協働的に学ぶ授業を展開することに合わせ、教員の養成・採用・研修の改善を中教審で検討後、28年度中をめどに制度改正を図る。
 調査書や指導要録の改訂に関する専門家会議を立ち上げ、共通様式の策定や「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の結果の示し方など、27年中にまとめ、検討結果を基に28年度中に調査書、指導要録を改訂する。
 既に学習指導要領の見直しは始まっているが、同プランでは28年度中に答申し、「過去の改訂スケジュールに基づくイメージとしては、高等学校は29年度中に告示、34年度から年次進行で実施」と記述した。

高大接続改革実行プランの重点施策とスケジュール

共に創ろう「先取りセミナー」今夏に開催
「知りたいこと」大募集

 日本教育新聞社は今夏、(株)ナガセと共に「大学入試改革先取り対応セミナー」を開きます。昨年度の「英語教育改革先取り対応セミナー」に次ぐ第2弾です。
 特に、平成32年度実施を目指し、検討が進められている「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)などを主眼に置いたセミナーを開催するに当たって、高校現場を中心に大学入試改革、高大接続改革などで「知りたいこと」や、分科会テーマで取り上げてほしいことなどを大募集します。疑問と感じている点、こうしてほしい点、ご意見など、幅広くお寄せください。
 皆さまの声を反映しながら、セミナーを共に創っていくことを目的にしています。
 ご意見などは、ファクス(03・5510・7812)へ、「大学入試改革先取り対応セミナー」係と宛名を明記し、お送りください。

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