全学生の約半数が留学を経験
9面記事TOEFL目安に目標明確
全国でも留学生派遣数が最上位に位置し、学部生、短大生を含め全学で約5割の学生が卒業までに留学を経験しているのが関西外国語大学である。学生一人一人のニーズに対応できるよう約30種類の留学プログラムを有する。世界51カ国・地域に広がる342校の協定大学とのネットワークが、こうした多様な異文化体験を後押しする。各留学プログラムでは、審査に当たってプログラム別にTOEFLの受験回数や点数の目安を具体的に示し、活用する。厳しい学内審査を勝ち抜き「留学候補生」になったとしても、4カ月間、海外留学生と共に授業を受ける「留学準備教育」で本当に留学が可能か試される。「グローバル人材というならば、語学力もさることながら、タフさ、気持ちの強さを持つ人が必要」(国際交流部)。海外に多くの学生を送り出す仕組み、特に英語圏への留学を主にリポートする。
「候補生」に準備教育 海外生と机並べ学ぶ
「頑張った学生」に住居費と食費支給
ニーズに応え30のプログラム
関西外国語大
「情報過多な時代、語学力だけなら国内にいても付ける方法はたくさんそろっている。しかし、本学では、実際に現地で体験することが大切だと考えている。そのために、年間約1600人の学生を海外に派遣している」と話すのは、国際交流部の廣本玲子課長。
留学環境を整えるため、学生のニーズ、レベルに合わせて、多くの留学プログラムを提供し、手厚く奨学金なども措置する。
用意した留学プログラムは約30種類(上表参照)。最も長いのは3年間の「大学・大学院 学位留学」だ。同大とアメリカの大学の学士号、大学院の修士号の計三つの学位を取得することが目的。アメリカの大学で2年間、大学院で1年間学ぶことになる。
2年間の留学が可能なのは、「学位留学」である。同大とアメリカの大学で学び、4年半かけ学士号を取得する。「2カ国専門留学」の期間も2年間である。1年ずつ二つの国の大学で学ぶ。
英語キャリア学部英語キャリア学科の3年次「全員(原則)専門留学」では、同学科の学修のさらなる深化を目指し、他学部の「リベラルアーツ留学」では幅広い教養を1年間で身に付けることが目標。同大での留学プログラムのコアとなっており、このプログラムによる留学生が全体の約3分の1を占める。
これらの留学プログラムは奨学金として、「フルスカラシップ」と呼ばれるサポートが適用される。留学先の授業料が免除されるだけでなく、学期期間中の住居費、食費が支給される。手厚いサポートを受けられるのは、約1600人の留学生のうち、約350人である。
いわば「頑張った学生」にはこうした手厚いサポートがあるものの、学内審査を突破するのは厳しい。学内成績や出席状況が問われ、TOEFLの目安(下表参照)も最低受験回数が「3回」、「大学・大学院 学位留学」「学位留学」「2カ国専門留学」の場合、その平均点は「500点以上」。しかも「うち1回が550点以上」が必要とハードルは高い。
1年間の「専門留学」「リベラルアーツ留学」でも、「500点以上」が必要条件になっている。
ここでいうTOEFLとは、TOEFL―ITPのことである。
これらの条件をクリアし、在籍学部により、多少の違いはあるが、筆記試験やスピーキングテスト、面接を経て、初めて「留学候補生」という資格を得る。
「留学候補生」となった後には、さらに「留学準備教育」を受けなければならない。この期間は4カ月間を設定。海外からの留学生が学ぶ留学生別科で、「留学候補生」が教室で一緒に机を並べ学ぶ。この共同開講科目のレベルは、海外の大学の3、4年次のレベルを基準にしたもので、同大ならではの特色でもある。海外大学を疑似体験できる実践の場として有効に機能する。
「留学先の環境に近い形で学ぶことで準備する。この環境についていけず、この段階で脱落する学生もいる。留学には一切引率教員などは付けないので、自ら学ぶ学生でないと留学先では適応できない」(廣本課長)現実があるためだ。
準備教育時の指定科目を履修して審査をパス。仮に留学が実現しても、今度は留学先で「GPA4ポイントのうち、平均2・0ポイント以上」の成績を求める規定がある。留学先で勉強をおろそかにし、成績が基準に満たない場合、1学期であっても派遣を中止して帰国。奨学金の返還も求められるという厳しさだ。
また、カリキュラムそのものに、留学が位置付けられる学部・学科もある。
前述の英語キャリア学部英語キャリア学科の専門留学や英語国際学部の英語圏、中国語圏への1学期語学留学などがある。外国語学部英米学科には、米国ノーステキサス大学と共同で開発した「早期留学直結プログラム」によって、ノーステキサス大から特別招聘(しょうへい)した講師に学び、TOEFL550点程度までアップさせることを目標に、2年次に1年間週12回の授業を受け、修了すると3年次春からのリベラルアーツ留学が実現するなどの仕組みもある。
他の大学では、留学と言えば、まだまだ「語学留学」が主流。関西外語大の短期留学も多彩だが、希望があっても安易には行けない。4〜5週間の「夏季語学留学」「春季語学留学」、10〜22週間の「秋学期語学留学」「春学期語学留学」などがあり、短期大学部生には留学先大学授業料免除の「スカラシップ」がある。TOEFLを1回以上受験していることが英語圏への留学では必須だ。その上で、学内成績などでの選考ステップを踏む。
事前に語学力のレベルが分かれば、受け入れ先に伝え実力に合わせたコースを受講できるだけでなく、派遣先を決める際の参考にするためでもある。
他の大学の語学留学レベルであれば、全員が楽にクリアするレベルにあると自負する。
この他、学部、学科によっては、スペイン語留学、中国学位留学など英語圏以外の留学プログラムも充実している。
帰国生らが留学機運を醸成
語学+「思考力」備えた人材育成へ
海外に留学生を旅立たせる一方で、毎年、約40カ国・地域から約700人の外国人留学生を受け入れている。
受け入れ期間を9〜12月(秋学期)、2〜5月(春学期)と海外の学年暦に合わせて二学期制に設定することで、短期留学の学生が来日しやすいように配慮している点も同大の特徴の一つ。
学内が既にグローバル社会を現出している。
留学から帰国した学生が、留学機運を盛り上げようと、さまざまな企画を打ち出せば、海外からの留学生たちも積極的に参加する。
ランチタイムフューチャリング帰国生、ランゲージカフェなどの開催と、積極的に企画し、外国人留学生や帰国生たちが「いい循環」を生み出してくれているという。
また、海外からの留学生が自国の文化を発信して交流を図るインターナショナルフェスティバルや、ハロウィーンの行事など、国内外の学生が楽しみながら、国際交流活動を展開する。
この交流の場が、日本の学生たちには、さらに語学力を磨かねばというモチベーションを高める場にもなる。
留学体験、異文化体験を積み重ね、学生たちは特技を生かして希望進路へとつなげている。キャビンアテンダント(CA)の採用数の多さは、その世界では既に知られているところだ。この他、ホテル業界、旅行業界などサービス業などへの就職率も高いという。
また、同大では外国語大学初の「小学校教員コース」(英語キャリア学部)を設けた。中学校教員の採用数は既に全国でトップクラス。高校教員も多い。今後は、「英語が使える小学校教員」を輩出していく。
「語学はできて当たり前」の大学から、さらに「交渉力」や「説得力」「思考力」を備えた人材育成を目指す。今後はインターンシップなどを強化し、早期に社会を知ることでより世界で通用する人づくりに取り組む。