日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

一刀両断 実践者の視点から【第669回】

NEWS

論説・コラム

落雷の恐ろしさ

 奈良県内の私立学校で、部活動中の生徒が落雷の被害を受けたという記事を読んで、以前の出来事を思い出した。
 林間学校でグループごとに散策をしていたとき、落雷があった。山の斜面を移動していたため、逃げ場がなかった。空は曇っていたが、落雷の予報はその後に出されたものだった。事前指導では落雷時の退避方法を伝えていた。
 無線を使って、各グループと連絡を取り、状況を確認しながら指示を出していた。そんな中、採用後わずかな先生から「方向が分からない」と不安な声で連絡が入った。涙声で、完全にパニックになっているのが分かった。
 そのグループの中に、ボーイスカウト経験のある児童がいることを思い出し、無線を代わってもらった。すると、その子は冷静に状況を把握しており、避難指示をスムーズに伝えることができた。
 今回のように、落雷予報が出ていた場合には、迷わず早めに避難させなければならない。落雷を甘く見ると、命取りになる。
 富士山で落雷を経験したことがある。雷は上から下に落ちるのではなく、横に走るように見えた。逃げ場がない状況で、登山客が雷に打たれ即死した。現場に駆けつけたが、雷が抜けた跡は一目で分かり、ひとたまりもなかったと感じた。
 こうした自然の恐ろしさを体験していないと、判断が甘くなり、退避行動が遅れて取り返しのつかない事態を招く。常に最悪を想定して判断し、行動させることが、リスクマネジメントの基本原則である。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、大学教授、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)

論説・コラム

連載