学校に蔓延る奇妙なしきたり
12面記事
齋藤 浩 著
教員の前例踏襲主義を問題視
以前評者が教員だった時、よく聞いた言葉は「共通理解」だった。異動して学校が変わると、既存のやり方と異動者が持ってくるやり方の葛藤が生じる。これがうまく調和すればよいが、時には対立を生む。
本書は「学校に蔓延る奇妙なしきたり」と題して、校則と共に不文律や暗黙のルールなどを問題視している。昨今、中学や高校の校則が話題になったが、小学校にも、ランドセルとスクール水着、キャラクター文具の禁止、服装・髪形などさまざまな課題が存在する。
また、著者は校則以外でも学校内の多様な事象を捉え、特に教員間の前例踏襲主義を問題視する。それは朝や帰りの会の持ち方、他クラスへの出入り、移動の際の整列、行事の練習など多岐にわたる。さらに授業のやり方や通知表にも言及している。最終章では「出でよ、異端教員」と題して、積極的に改革を目指す教員の出現を期待している。
学校の当たり前を疑うという風潮はここ数年続いてきたが、以前の取り組みをやめ、新しくしても、教員が変わると元に戻ることも多い。以前から続いてきた取り組みにも理由があるだろう。それはその学校や地域の課題を背景にしているかもしれない。一つ一つの取り組みが行われてきた背景を分析し、現状に照らして適切かどうか冷静に判断することが必要だろう。
(1760円 草思社)
(中村 豊・前公益社団法人日本教育会事務局長)