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ミライシードが学びと社会の架け橋に 今すぐ授業で使える「企業・団体コラボコンテンツ」を無償配信

7面記事

企画特集

社会課題を”自分ごと“として捉える力を育む

 教科書だけに学びを閉じず、子どもたちが社会課題を「自分ごと化」できるようにしたい—。こうした思いのもと、株式会社ベネッセコーポレーションでは、学習支援ソフト「ミライシード」内の「オクリンクプラス」で使用できる教材コンテンツを企業・団体とコラボレーションして開発。2025年5月下旬から順次、小中学校に向けて無償配信する。ここでは、その概要と併せて、第1弾となるオハヨー乳業株式会社と共同開発した教材コンテンツを活用した授業事例を紹介する。

学校の学びと社会問題を結びつける

 GIGA端末の更新に伴い、学校現場では「主体的・対話的で深い学び」を意識した授業改善をより一層進めて、自分自身で問題を解決するスキルや、子ども同士の対話によって考えを深めたり、表現したりする力を育むことが期待されている。
 そして、こういった学びを実現していくには、さまざまな学習場面に対応した学習支援ソフトが不可欠になる。中でも大きなシェアを獲得しているのが、全国小中学校の約3分の1にあたる1万校超・350万人以上の児童生徒(2025年1月時点)に活用されている、ベネッセの「ミライシード」だ。
 一方、社会全体がますます予測困難になる中で、将来の社会人として必要な資質・能力を身に付けていくためには、学校で学ぶ内容が現実の社会問題と関連していることを知り、自ら課題を認識し、能動的に参画していくような授業のあり方が模索されている。
 その中で、社会の実態に近い学びを提供する「企業・団体コラボコンテンツ」は、プラットフォーム上に多様なコンテンツを載せることで、より多くの学校で取り組みやすくなるように開発された。教科書で学んだ社会課題に対し、実際に向き合う企業・団体の取り組みをを反映させることで、子どもたちが社会課題を”自分ごと“として捉えることができる教材コンテンツになっている。

単元の内容を膨らませる教材コンテンツ

 特長は、各教科の単元にひも付いた、社会課題に向き合う企業・団体の取り組みを題材に、デジタルコンテンツ化(テンプレート+指導案+動画※一部のみ)していることにある。自分のノートづくりと共同作業の場を一つのアプリで完結できる、ミライシード内の「オクリンクプラス」を活用して協働学習・個別学習・振り返りを充実させることで、子どもたち主体の学びを後押しする。
 教科書で学んだ知識をもとに、そこからさらに子どもたちにとっても身近な社会課題へと迫る教材を使うことで、対話を促したり、より学びを深めるアウトプットシートを作成したりといった活動を通して、探究的な学びに発展させていける魅力がある。さらに、教材コンテンツは単元のねらいや課題を膨らませる内容であることから、教員がこれまで行っていた授業準備の負荷が減り、校務の効率化につなげられるメリットがある。
 また、授業が円滑に実践できるよう、コンテンツごとに教員向け指導案と一斉講義型の動画、子どもたちが協働学習で使うワークシートや資料を用意。4月上旬開設予定の「企業・団体コラボコンテンツ」WEBサイトから、リンクをコピーし、ミライシード内で利用できるようになる。

オハヨー乳業とのコラボ~身近な「牛乳」から食糧問題について考える~

 第1弾として開発したオハヨー乳業とのコラボでは、小学5年・社会科の単元「これからの食料生産とわたしたち」にひも付いて、「農業・酪農の担い手不足解消」という社会課題をテーマに、身近な「牛乳」から食糧問題について考える教材コンテンツになっている。
 国内の酪農は、海外からの乳製品輸入の増加や飼料価格の高騰、労働力不足によって離農が進んでいる。しかし、その中でも牛乳は国内自給率が100%であり、将来的な品質維持や安定的な供給を保っていく上でも、次世代に向けて酪農に対する理解や関心を高めていく必要がある。そのため、オハヨー乳業ではこれまでも小学校への食育授業を実施してきたが、今回のコラボはこうした取り組みをより多くの学校に広げていくねらいがある。
 本コンテンツにおける「オクリンクプラス」の活用法としては、牛乳の食料生産グラフなどの資料を通して児童自身が問いを見いだし、クラスメートがどのような問いを持ったかキーワード機能で全体集約したり、スタンプ機能やコメント機能で相互評価したりする。
 また、これからの酪農を発展させていくための考えを出し合うために、グループに分かれて一つのカードを共同編集し、提出BOXに提出させることなどを提案している。

主要教科を中心に今後も拡大

 近年、学校では地域・社会に開かれた学びの実践として、民間企業などと連携した子どもの”リアルな体験・学習活動“の充実が必要になっているが、それを個々の教員が多忙な職務の合間に実現させていくのは容易ではない。
 ベネッセでは、このような学校の学びと社会課題を結びつける取り組みとして、企業・団体とのコラボコンテンツをさらに拡大。1人1台端末を活用した個別最適化された学びや協働的な学びの推進に寄与し、子どもたちが社会課題を”自分ごと“として捉えられる力を育むため、今後も「総合的な学習の時間」を始め、理科や社会などの主要教科を中心に展開していく意向だ。

「企業・団体コラボコンテンツ」WEBサイト
(2025年3月中旬開設、コンテンツリリースは5月下旬より順次開始予定)
https://bso.benesse.ne.jp/miraiseed/fansite/kigyou_collabo/index.html

オハヨー乳業コラボコンテンツ実践事例 酪農の担い手不足、子どもたちが解決策を提案
岡山県・岡山市立浦安小学校「地域・社会に開かれた学びの実践」

 「企業・団体コラボコンテンツ」の第1弾となる、オハヨー乳業株式会社と共同開発した教材コンテンツを活用した成果発表「子どもプレゼン大会」が、2月10日に岡山市立浦安小学校で行われた。地元・岡山県でも酪農の担い手不足が深刻化する中で、子どもたちが考えた解決策を提案。地域の課題解決に向けた探究学習の実践として注目を集めた。

自分たちでできることを考え、伝える
社会課題を身近な問題に置き換える

 発表したのは、竹村輝将教諭が担任を務める5年A組の7グループ。社会科の単元「これからの食料生産とわたしたち」を題材に、”農業や酪農の担い手不足解消のために、私たちができること“をテーマに、1月中旬から授業を進めてきた学習のまとめになる。
 その中で、教科書だけでは足りない、子どもの生活導線に近づけるために教材として利用したのが、自身が監修した「オハヨー乳業コラボコンテンツ」だ。これにより社会課題に向き合う同社の取り組みや、担い手不足の中でも安定した生産を続ける酪農家の技術や姿を知ることで、一人一人が身近な問題として捉え、”自分ごと“として考えさせるのがねらいになる。
 子どもたちは「オクリンクプラス」内の教材コンテンツで、地元・岡山市は牛乳や果物の産地として有名だが、農業就業人口は10年間で約4割減少し、市民の地産地消への関心が低いことなどを学習。その上で、”これからの酪農の食料生産はどのように進めていけばよいのか“についてグループごとに協働学習を行い、解決につながるアイデアや自分たちでできることを検討した。
 作成した資料は、子ども同士でコメント・評価ができる機能を活用してブラッシュアップを重ねることで、より良い提案になるように仕上げていった。この機能は、プレゼン終了後にどのグループが一番よかったかを子どもたちが独自投票する場面でも使われ、学習の振り返りにも適している。

グループごとに作成したプレゼン資料をもとに発表をする

創意工夫を凝らしたアイデアを出し合う

 「子どもプレゼン大会」は、地元のオハヨー乳業、酪農組合、ベネッセによる3名の審査員を前に、各グループが自分たちの考えを伝える形式で行われた。
 発表では、地産地消の意識を高めるために、新鮮さや価格の安さ、フードマイレージが削減できる魅力を訴える。食料自給率を上げる酪農家の担い手づくりの啓発として、家族経営でも高価な搾乳機械が導入できる仕組みをつくる。牛乳嫌いな人も食べられる給食メニューの開発、酪農家の仕事をバーチャルで体験できる出前授業、酪農家の技術や仕事のやりがいをPRする提案など、教科書だけでは得られない学びの深化を感じとることができた。
 さらには、乳牛のストレスを軽減する音楽のリラックス効果で甘みが増したモーツァルト牛乳を引き合いに、AIを活用して牛の心情や健康状態に合わせて聞きたい音楽が流れたり、酪農家に知らせたりする装置を作るなど、品質や生産量を上げるための新たな搾乳方法を提案したグループもあった。

疑問を追究しようという態度が芽生えた

 竹村教諭は今回の実践を振り返り、「インターネットの情報だけに頼ることなく、教材などを通して酪農家の思いを知ることで、社会や地域に根差した課題に対して深く考える力が身に付い た」と手応えを披露。その上で子どもたちの大きな変化として、疑問が浮かんだら、それをさらに追究しようとする態度を挙げた。それは大会後にインタビューを受けた子どもたちの「日本はお金持ちだと思っていたが、勉強したら輸入が多く、酪農家には赤字が多い。私たちの世代で何とかしなければと思った」「今は生産者の思いを考えて、牛乳を最後まで飲むようにしている」といった言葉にも現れている。
 また、児童たちの発表を見守った大西佐由美校長は「ICTを使って、自分が興味を持った課題に対して広く調べ、意欲的に学びを深められる姿が見られた。その過程で、子ども同士だけでなく実際の社会ともつながることができた。それがこの教材コンテンツの優れているところ」と評価した。

オクリンクプラスのスタンプ機能でプレゼンを相互評価する

地域ブランド商品の提案が最優秀賞に輝く!~地域食材の魅力を伝え、酪農家を応援したい~

 最優秀賞は、「ホンモノのおいしさを届ける地域ブランドの提案」を行ったグループが選ばれた。まず、岡山県の酪農家が20年前の3分の1に減少していることを説明してから、香川県の讃岐サーモンやオリーブハマチを取り上げ、地域ブランドを開発して産業を盛り上げる必要性を指摘。その例として、子どもたちが考えた「OHAYOグルト大福」を提案した。
 これは、オハヨー乳業のヨーグルトやクリーム、岡山県産のシャインマスカットなどの素材をミルク餅で包み込んだオリジナル商品で、地域食材の魅力が県内のみならず県外にも広がれば、大きな相乗効果を生み出すと強調した。
 賞状を手渡したオハヨー乳業の藤本篤社長は「岡山の基幹産業の一つである酪農について、いろんな角度から真剣に考えてくれて感銘を受けた。特に地産地消を大事にした商品開発の提案は、実際の開発場面でも参考になるものだった」と子どもたちにエールを送った。

藤本社長による表彰の様子

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