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近代日本官僚制と文部省「非主要官庁」の人事と専門性

17面記事

書評

松谷 昇蔵 著
多様な人材 異質な形成史

 明治期の中央省庁を支えた官僚、とりわけ日本の教育政策を担った文部省の官僚に焦点を当てたのが本書である。帝国大学法科大学出身者が当時の官僚イメージに重なりがちだが、著者は「主要官庁や官僚だけでは見えてこない多様な官僚の様相を示すことは、近代日本の官僚制がいかに形成されてきたのかを再定義することにつながる」と考えた。
 必ずしも帝大法科出身者ばかりでなく、帝国大学文科大学出身者、省直轄の学校長らが加わった明治期の文部省の官僚の姿、属性が、文官試験試補及見習規則の制定(明治20年)、文官任用令(同26年)による法学中心の試験科目で帝大法科出身者が予備試験を免除されるなどの特徴がある文官高等試験の実施(同27年)によって、どのように変化していったかを、丁寧に描き出している。
 第Ⅰ部「文部省と官僚任用制度の展開」(第1~3章)に内閣制度導入前後、官僚任用制度の成立期、確立期を取り上げ、第Ⅱ部「文部官僚の変容と職種・職務・評価」(第4~終章)では「文部省編輯局」の仕事や入局した国学者、漢学者、立ち位置が官僚と異なる「視学官」制度の確立、当時の教育雑誌から見た文部官僚の評価、終章では全体を総括した。
 当時の業務や関わった歴史的な人物に触れるとともに、内務省経由で地方の教育情報がもたらされるなど、中央省庁として軽視されていた要因も伝わり、興味深い。
(6270円 法律文化社)
(矢)

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