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「これくらいできないと困るのはきみだよ」?

17面記事

書評

勅使川原 真衣 編著 野口 晃菜・竹端 寛・武田 緑・川上 康則 著
「ふつう」に合わせる支援 疑問視

 「これくらいできないと困るのはきみだよ?」
 子どもたちにそんな言い方をしたことはないだろうか。その言葉に、心に引っ掛かるものはないか。
 勅使川原真衣さんは、講演後の質疑で現場の教員から出たこの言葉を真摯な叫びとして受け止めた。その編著者による、さまざまな立場から学校や子どもたちに関わる4人の方との対談である。かなり分厚く気が引けるかもしれないが、読みやすく、内容が心に刺さり示唆に富む。きっと後悔しない。ご一読をお勧めしたい。
 例えば、「『支援』をしていると、その子を結局、マジョリティを中心とした社会に合わさせる(中略)ための支援になりやすくて」「懸念しているのは、少しでも『ふつう』から逸脱する子どもがいたら、すぐに別の場での支援対象として検討をするケースが多いこと」(いずれも野口晃菜さん)といった言葉を、どう受け止めるだろうか。
 あるいは、「精神病院と工場と学校は同じモデル」という一見挑発的な指摘や、「先生ってそんなにしんどい仕事である必要は本来ないよね、(中略)なぜそうではなくなったの、とか。それが問われるべきなんですよね」という原点回帰の問いに、どう向き合うか。
 対談者たちの、自身に対する冷静な認識や自己抑制的な姿勢にも共感を覚えた。
(2255円 東洋館出版社)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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