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サトー先生の「きょういく日めくり」~きょうも楽しく学校へ行くために~【第23回】

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論説・コラム

渾身(こんしん)一作より小ネタ連発

 グータラなボクだけど、初担任のときから日刊学級通信を書いてきた。年間200号前後、「質より量」。保護者さんからしたら「今年の担任はすごくきっちりした人だ」と、勝手に誤解してくれた。こんなにガサツなヤツなのに、ね。

 学級通信の効用は多々あれど、ただでさえ忙しい学校現場、年々雑務が増える。通信を書くための「時間」がなかなか捻出できない。先日、ボクが教師になって初めて出した学級通信集を見返す機会があったんだけど、赤面。恥ずかしいばかりの「熱血ワード」が並ぶ。それ以前に、よくもこれだけ多くの文字を、毎日毎日書き連ねたものだ。家族もいない独身教員だからできたことだね。

 ベテランと言われるようになってからも「日刊通信」を続けたが、中身が大きく変わった。担任であるボクの書く文章量が圧倒的に減った。生徒たちの行事感想やさまざまなテーマについての意見を切り貼りし、コメント1つ加えるだけを連載する。モットーは「1号30分でできる」で、見事な手抜き号の数々だ。

 しかし、生徒の反応は、後年のほうが圧倒的に大きかった。年数回発行の通信だと、こちらも「よりすぐりの珠玉通信を出さねば」と思い、文字数が増えてしまう=読まれない。「熱血号」はときどきだから効果があって、日ごろの小ネタはボディブロー。とかく教員って、自分だけで全てやろうとする真面目さが不幸で、途中でつぶれたら意味ないし、業務は膨大で時間は有限だ。かかえこまない。

 学校だって、1人だけ200%のスーパーティーチャーがいるところより、80%の力の先生たちがうまく協業しあっているところのほうが、風通しがよく、何よりとにかく、気持ちいい。
 
 
佐藤功(さとう・いさお。大阪大学人間科学研究科元教授)
大阪府立高校教員として33年。酒と温泉と生徒ワイワイ……「生涯現場の一担任」のはずが、生徒や保護者とのわちゃわちゃ大好きを見込まれ、気がついたら大阪大学教職担当初代教授(人間科学研究科所属)。教職志望の学生たちと地域活動やら探究活動やら、日本全国を駆けまわり、現職は「一般社団法人NEOのむら」理事。最近、「旅行業務主任」の資格も取ったらしい。著書に『教室の裏ワザ100連発』『気がついたらボランティア』(学事出版)『はじめてつくる「探究」の授業(編著)』(大阪大学出版会)など。「おまかせHR研究会」主宰。

サトー先生の「きょういく日めくり」