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一刀両断 実践者の視点から【第647回】

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塩づくりと郷土力

 兵庫県赤穂市での講話と面談を終えた後、赤穂の塩づくりを体験した。作業所は公園内にあり、さまざまな手法で海水から塩を作る歴史と工夫に感銘を受けた。濃度を高めた海水を沸騰させると、瞬く間に白くなり、塩の結晶が湧き出てくる。その変化の速さには驚かされた。しかも、手作りの塩がお土産として200円という安価で手に入った。
 透明な海水から塩の結晶が生まれる様子は、まるで子どもの可能性を見ているようであった。
 見えないものを見えるようにする。見えるものから見えないものを推測する。それが学問ですよ。
 日本映画監督会長を務めた松林宗恵監督が語ってくれた言葉が心に残る。
 初めて訪れた赤穂は、赤穂浪士で有名だが、赤穂みかんやブランド牡蠣など、味覚の宝庫でもあり、温泉も豊富であった。
 何よりも感銘を受けたのは、私の講話に市長や教育長が最前列で参加し、予定を変更して最後まで熱心に耳を傾けてくださったことである。
 全国で講演をしてきたが、市長と教育長が最前列に座り、二コマにわたり質疑応答を含め150分にわたって対話をしたのは初めての経験だった。
 この姿勢こそが、赤穂の地が育む郷土力の表れだと感じた。ここには、義に厚い人を育てる力が宿っていると確信した。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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