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読めば分かるは当たり前?読解力の認知心理学

14面記事

書評

犬塚 美輪 著
読み手のつまずき 解消法は

 認知心理学は知覚、学習、記憶、思考などの認知プロセスを研究対象とする。本書は「読んで理解する」とはどういうことか、あるいは「分からない」「読むのが難しい」とはどういう状態なのかを、心理学の研究知見からひもとき、「読解力を高めるための地図」を描く。
 読解の第一の目的地は「表象構築」、易しくいえば、文章として自分たちの外に置かれている世界を自分の頭の中に再現することだ。そしてそれを経由した後の段階として「心を動かす」読解と、「批判」の読解がある。
 だが、この初めの段階のプロセスが生まれつきうまくできない人もいる。つまずきを読み手自身の努力で解決することは困難で、方略を指導し、それを使う練習をすることによりつまずきを解消することが考えられる。その際には、誰かにチェックしてもらう、誰かに説明するといった「ほかの人の力を借りる」ことも効果的だ。
 また、日常生活ではあまり使われないが学習の文脈ではよく用いられる「学習語彙」(例えば「したがって」)を丁寧に指導することの重要性も指摘されており、参考になろう。
 「とにかくたくさん読め」ではなく、苦手な要因を意識して、その子の課題に合った対応や指導を見いだすのも教師の力量だ。学習指導に、精神論ではなく、研究の知見を積極的に取り入れ、正しく有効に活用したい。
(990円 筑摩書房)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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